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35話 別れ

翌朝、俺達が朝食を食べていると、突然爆発音が響いて、船が揺れた。


「な、何事ですか!?」


「海賊の襲撃だな」


慌てるサフィラに俺は冷静に答えた。


「えぇっ!?」

「落ち着け、相手は海賊だぜ?想定内じゃねーか」

「うぅ……そうだけど」


アリルは不安そうな表情を浮かべる。


「まずは、甲板の様子を見に行きましょう!」


サフィラは立ち上がった。

そして甲板へと走っていく。


「ああ、そうだな!」


俺も立ち上がる。

アリルは俺の腕にしがみついた。


「おい、どうした?」

「ハイネは病み上がりでしょ!危ないから行かないで……」


俺が外に出ようとすると、アリルが必死に引き留めて来る。


「大丈夫だって、たかが海賊相手に遅れを取るかよ」

「でも……」

「心配するなって、ほら行くぞ」


アリルの手を引き、部屋の外へ出る。


「ところで、シルフはどうした?」

「そういえば、今日はまだ見てないわ」

「まさかまだ部屋で寝てんのかー?」


シルフの部屋の前で立ち止まるとドアには鍵がかけられていた。


ノックしても返事がない。


ドンドンドン! 俺は乱暴に扉を叩く。

すると、何者かが後ろから声をかけてきた。



「シルフちゃんなら、もうこの船にいないでやんすよ」



緑の顔をしたリザードマンが立っていた。

二メートル近くはありそうな大きな獣人だ。


「は?どういうことだ?」

「今日の朝、船長と一緒に船を出たでやんす」

「どこに!?」

「行き先はわからないでやんす」

「そんな……どうして急に?」


「まさかマーリンのやつ、シルフをどこかに連れ去ったんじゃ……」

「船長に限ってそんな事はないでやんす!」

「うるせぇ!海賊なんざ信用出来るか!」


もしシルフの正体が知られていたら、その身を奴隷商人に突き出されでもしていたら……終わりだ。


「その話は聞き捨てならないでやんす!船長はリザードマンのおいらを拾ってくれた母のようなお方、その母を侮辱するのは許さないでやんす!!」


リザードマンは俺の言葉にキレた。

これは俺に非がある。

島から救ってくれた恩人でもあるマーリンに言っていいセリフではなかった。

何より、このリザードマンからしたら肉親を馬鹿にされたようなもんだ。


「……悪かった」

「わかればいいんでやんす」


俺達は二人同時に息をつく。


「揉めている場合じゃないわよ。ラギア、これからどうすればいいの?」


「ラギア……?」

「おいらの名前でやんす」

「なるほど、俺はハイネだ。よろしくな、ラギア」


俺はさっきの無礼の詫びも兼ねて握手する為、手を差し出した。


「こちらこそよろしくでやんす!」


ラギアは大きな手で握り返してきた。


「てか、急に静かになったな」

「そうでやんすねー」


「ハーイーネ、さーん?」


後ろから殺気を感じ、振り向くとそこには笑顔のサフィラがいた。


「さ、サフィラ……どうした?なんかあったか?」

「いえ、何でもありませんよ」

「そういえば、海賊は?」


「来るのが遅いから私が一人で追っ払ってしまいました、てへ♪」


あ、これ怒ってるやつだ……。


「そ、そうか。それよりさ……」

「シルフ様の事ですよね?」

「ああ、何か知ってるのか?」


「いえ、私も知らないんです。私が朝、部屋に呼びにいった時は既にもぬけの殻でした……」

「そうなのね、どこに行ったのかしら……」


アリルとサフィラは心配そうに俯く。


「まあ、あいつの事だ。そのうち帰ってくるだろ」

「……え?」

「いつもの事だよ、気まぐれなやつだからな。まるで風みたいに」


実際俺とシルフは長い時間一緒に過ごすことはあまりない。

いつも突然目の前から姿を消しては、たまに現れてを繰り返していた。


しかし、今回の別れが最後になろうとは、この時の俺には知る由もなかった。

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