表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/40

31話 嵐の前

「悪い、マーリン。俺たちもう行かねーと」

「あらら、それは残念だね」

「仲間が先に行っちまったからさ」


マーリンは少し残念そうにしている。


「それでは、失礼します」

「またなー!」

「分かった、また会えたらいいね、色男さん」


俺とサフィラは軽く頭を下げると、その場を後にした。

アリルはマーリンを睨みつけた後、俺たちの後をついてくる。


「全く、ひどい目に遭っちゃったぜ」

「その割にはデレデレしてたじゃない」


アリルは不機嫌そうだ。


「そりゃあ俺だって男だしさ……」


正直言うとマーリンの体は最高だった。胸も大きいし色気もある。

おまけに美人だしな。

俺は腕に当てられた胸の感触を必死に思い出していた。


「最低」


アリルは軽蔑するような視線を送ってきた。


「仕方ないだろ、あれは不可抗力というものだ」

「ハイネ様もハイネ様です。もう少し女心を学ぶべきだと思いますよ?」

「うっ……」


サフィラの指摘に何も言えなかった。


「でもまぁ、今回は許すけど……次はないからね」


アリルは頬を膨らませながら言った。


「はい……ゴメンナサイ」


俺は素直に謝ることにした。

とぼとぼと歩きながら街の中心に出ると、シルフの声がした。


「おぉ〜い!みんなぁ!こっちこっち〜!」


シルフは手をブンブンと振りながら、声を上げていた。

その手には少し大きめのリンゴ飴を持っていた。


「シルフ様、どうしたんですか?その飴は」


「なんかねぇ、今日はお祭りの日みたいで、お店の人から貰ったんだぁ!」

「へぇ、お祭りがあるのか?」


そう言えば街は人がたくさんいて賑やかだ。


「うん!それでねぇ!私、屋台とか見て回りたいんだけど、ダメかなぁ?」


シルフは上目遣いで見つめてくる。


「別に構わないぞ」

「やったぁ!ありがとぉ!ハイネ!」


シルフは嬉しそうに抱きついてきた。


「そうと決まれば私達も行きましょ、サフィラ」

「はい、お祭りなんて久しぶりなので楽しみです」


アリルとサフィラも乗り気なようだ。


「へいへい、そこの可愛いお嬢さん達!新鮮な刺身はどうだい?」

「魚料理ならうちの店が一番だよ!!」

「焼き鳥いかがですかー?」

「いらっしゃーい!!イカ焼きありますよー!!」


様々な出店が立ち並んでおり、活気に溢れている。

シルフはキョロキョロしながら歩いている。


「わぁー、美味しそうな匂いがするぅ〜」

「シルフ様、あんまり離れちゃ駄目ですよ?」

「大丈夫だよー、サフィラ!」


シルフは笑顔で言うが、心配になるのは当然だろう。

ここは人通りが多い場所なのだから。


しかし平和で賑やかなこの場所が、これから血の染まることになるとは、この時には思いもしなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ