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30話 修羅場

それからサフィラの背中に乗って飛行を続け、ようやく目的地に辿り着いた。


「ん~、着いたぁ!!」


シルフは大きく背伸びをしながら叫んだ。


『到着しました。ここが港町、ヘルズガルドですね』


サフィラはゆっくりと地上に着地した。

そしてすぐに元の人間の姿へと戻った。

俺達が降りた街は四方が海に囲まれており、潮風の匂いが鼻孔をくすぐる。


「本当にこんな所に人が住んでいるのかしら?」

「分からねぇ」


俺も初めて来た街だしな。


「でも、いい街だねぇ!」


シルフの奴、随分ご機嫌だな。


「おい、あんまり勝手に行動するんじゃないぞ」


俺は一応シルフに注意しておく。


「わかってるよぉ!それより早く行こうよぉ!」


全く、分かってるのかどうか怪しいものだ。シルフは俺の手を引っ張ると走り出した。


「ちょ、ちょっと待てよ!」


俺は慌てて追いかける。


「まったく、子供じゃないんだから落ち着きなさいよ」


アリルが呆れ顔で言う。


「だってぇ!」


シルフは振り返りながら頬を膨らませた。


「でも、そういうところがシルフ様のいいところですよ」


サフィラは微笑みながら言った。


「それで、これからどうするのですか?」


サフィラは俺の方を見て質問してきた。


「まずはのんびり休もうぜ。色々あって頭が整理できないし」


俺はサフィラの問いに答えた。


「そうね……私も少し疲れたわ」

「そうなら、まずはご飯にしませんか?私に久々に竜の姿になったのでお腹が空きましたし」

「ああ、それもそうだな」


俺は同意して、サフィラと一緒に港に向かって歩き始めた。


「ねぇねぇ、何食べるぅ?」


シルフは俺の隣を歩いている。


「別になんでもいいぜ」


俺は興味なさげに返事をした。


「私はお魚料理が食べたいかなぁ?」

「ここは港町ですから、新鮮なお魚が食べられると思いますよ」


シルフとサフィラは楽しげに話している。

そんな二人を見ているとなんだか心が和むような気がしてくる。


「随分と仲がいいのね」


アリルは二人の会話に入りたそうにしている。


「まあまあ、アリル様はハイネ様とイチャイチャすればいいじゃないですか」


「えっ!?そ、それは……」


アリルの顔はみるみると赤くなっていく。


「ふふ、冗談です」


サフィラは意地悪そうな笑みを浮かべていた。


「あ、あなたね~〜!!」


アリルは顔を真っ赤にして怒っている。


「まぁ、落ち着けって。とりあえず、飯食いに行くぞ」


俺はアリルの怒りを抑えようと宥める。


「はぁ……そうね。行きましょう」


アリルは小さく溜息をつくと、落ち着いた様子を見せる。


「アリル様、赤くなって可愛いです」

「う、うるさいわよ!」


サフィラの言葉にまた怒り出すアリル。


「はいはい。喧嘩しないでくれよ。それより早く行こうぜ」


俺は二人の仲裁に入る。


「ハイネ様はもう少しアリル様に構ってあげてください。寂しいみたいですよ?」


サフィラが笑顔でとんでもないことを言った。


「なっ!?ち、違うわよ!私はただ、その、あの……」


アリルはあたふたしながら言葉を濁す。


「ほら、アリル様はこう言ってますし」

「お前、面白がってるだろ?」

「いえ、そんなことはありませんよ?」


サフィラは笑いながら否定した。


(絶対嘘だ)

俺は確信した。こいつは絶対に楽しんでいる。

想像以上にくせ者かもしれない。


「はい、そこまで!」


シルフが手を叩いて場を収める。


「早くお店を探そうよぉ〜」


シルフの言う通りだな。さて、どんな店がいいかな。

すると、前方からこちらに向かってくるグラマーな女性がいた。


胸の谷間を強調したその女性は露出度の高い服を着ており、短いスカートからは長い足が見えている。

年齢は20代後半くらいで、背丈は俺より少し大きかった。

褐色の肌に長い金髪を後ろで結っており、大きなサングラスをかけていた。


その女性がすれ違った瞬間、微かに香水の匂いが漂ってくる。


「あら、いい男がいるじゃないか」


突然、女は立ち止まると振り向いて俺を見た。


「お姉さんといいことしないかい?」


妖艶な笑みを浮かべながら近づいてきた。


「ま、マジか……」


こんな美女に迫られるなんて生まれて初めてだ。しかも、スタイル抜群だし。


「ちょっと、待ちなさい!」


背後で声が聞こえてきた。振り返るとそこにはアリルの姿があった。


「あなたねぇ、私の彼氏にちょっかい出さないでくれるかしら?」


アリルは不機嫌そうな表情をしている。


「おや、彼女持ちだったのか、残念だね」


そう言うと女性は胸をわざとらしく押し付けてきた。


「離れなさいよ!」


アリルは女性の肩を掴むと強引に引き剥がす。


「はは、乱暴だねえ」


女性は呆れたように呟くと、俺に向かってウインクする。


「アタイの名前はマーリン、よろしく」


豊満な体を見せつけながら自己紹介してくれた。


「あっ、どうも、俺はハイネだ」

「ハイネ、いい名前じゃないかい」


マーリンは俺の頬に手を添えるとキスをしてきた。


「っ!?」

「なっ!?何してるのよ!!」


アリルは顔を真っ赤にしながら怒鳴ってきた。


「何さ、ただの挨拶じゃないか」


マーリンは余裕の笑みを浮かべている。


「どこがよ!!それに、私だってあまりしてないのにぃ〜!!!」


アリルは地団駄を踏むと、怒り出した。

マーリンは俺の腕に抱きつくと、挑発的な視線を送ってくる。


「アリル様、落ち着いてください」


サフィラは冷静に声をかけるが、アリルは止まらない。


「サフィラは黙ってて!!」

「は、はいぃ……!!」


サフィラは一瞬で大人しくなった。


「そもそも、ハイネが悪いんじゃない!美人なお姉さんに言い寄られて鼻の下を伸ばしてるんだから!」


アリルは涙目になりながら睨んでくる。


「い、いや、別に鼻の下なんか伸ばしてないし」


俺は慌てて弁明するが、アリルは聞いてくれない。


「アタイならアンタを満足させてあげられるよ」


マーリンは耳元で囁いてくる。

(やばい……)

俺は理性を保つために必死に耐えていた。


「こ、このぉ〜……エロ女!!」


アリルは叫ぶと同時にマーリンに飛び蹴りをするが、簡単に避けられてしまう。


「おっと、暴力はよくないね」

「うるさい!あなたのせいでハイネが変なこと考えちゃったじゃない!!」

「アンタ、なかなかカワイイじゃないのさ」


マーリンは笑う。


「だから、いい加減離れて!!」


アリルは今度は拳を振るおうとするがあっさりと受け止められてしまった。


「離せってばぁ!」

「やだよ、こんな楽しいこと止めるわけないじゃないか」

マーリンは楽しげな笑顔を浮かべている。


「こっちは楽しくないわよ!!」

「それはアンタが決めることじゃないよ」

「ぐぬぬぅ〜」


アリルは悔しげに歯噛みしている。

そして右手に魔力を集め始めた。

もしかして精霊術を使うつもりか?


「ちょっと待て、さすがに魔法を使ったらまずいだろ」

「ふーん、私よりこの女の心配をするのね。この浮気男!!」

「え、いや……」

「何でもないわよ、ふん!」


アリルは精霊術を使うのをやめるとそっぽを向いてしまった。


「あのー、ちょっといいですか?」


サフィラは恐る恐る話に入ってくる。


「シルフ様が待ちくたびれて先に行ってしまったのですが……」


えっ?マジで? 後ろを振り向くと、確かに姿がない。

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