3話 謎の占い師
「あー、ごめんなさいね。つい笑ってしまって」
おばさんは悪びれもなく言った。
見た目はかなりふくよかで、エプロン姿が特徴だ。
「なんか失礼な人ねー、いきなり笑うなんて」
アリルが不機嫌そうな顔で言う。
「あら、ごめんなさいね。あなた達、ひょっとして冒険者なのかい?」
「うん、まあ、そんなところよ」
アリルがツンとした返事をする。
「そう、若いのに感心ね」
「そういうアンタは何やってんだよ?」
「私かい?私は旅をしながらこの村で色んな物を売ったりして暮らしてるのさ」
「へぇ、それは凄いです!」
「ふふっ、ありがとうね。ところであなた達は何をしてたんだい?」
「いや、別に大したことは何もしてないぜ」
「ふーん、そうかい。じゃあ私はこれで」
「おう、またな」
「ああ、さよなら」
俺は手を振りながら別れを告げる。
そして宿屋に戻ると早速部屋に向かった。
「ところでさっきのおばさん、何だったんでしょう?」
マナは可愛く首を傾げて言った。
「さぁな。まぁ気にする事ないだろ」
「そうそう、多分私達に何か売りつけようとしてただけでしょ」
俺が興味なさげに答えると。
アリルもベッドの上で寝転びながら同意してきた。
「あの人、すごく怪しい感じがしたんですよ」
「まあ、なんか変な魔力は感じたわね」
「何かあるんですかね?」
「分からないわ。とりあえず今日はもう寝ましょ」
「それもそうだな。おやすみ」
「はぁ……おやすみなさい」
翌朝、俺達は朝食を食べ終えるとギルドに向かっていた。
するとどこからともなく声が聞こえてきた。
「はっはー、ワイの出番や!」
「なんだ!?」
辺りを見回すと、路地裏の暗がりから一人の男が姿を現した。
頭にバンダナを巻いた、少し目つきの悪いチャラそうな印象の男だった。
「ワイの名はダイナ!お前の運命を占ってやるわ!」
「占いだと?」
「そうや!どうせ暇なんやろ?」
「暇じゃないわ、私達は忙しいの。行くわよ、ハイネ、マナ」
アリルは冷たく言い放つとギルドに向かおうと歩き出した。
「まあまあ、そう言わずに。ほら、そこに座れや」
ダイナは近くの椅子を指差す。
「はぁ、分かったわよ」
仕方なく、俺達はダイナに言われた通り椅子に腰掛けた。
「さぁ、占うで!うひひひひ」
「不気味な笑い方ね。もっと普通に喋れないの?」
「ええやんか、別に。ほな、まずはお前からや」
「はいはい、分かりました。どうぞご勝手に」
アリルは呆れたようにため息をつくと、目を閉じた。
「ねえちゃん、いい乳しとるやんけ」
「……はあ?」
ダイナはアリルの胸をいやらしく見つめる。
「ちょっと、あんまりじろじろ見るんじゃないわよ」
「そう言われてもな、気になるもんはしゃあないわ」
「ナンパだったらもう行くわよ?」
「ち、ちゃうわ!待ってくれや」
「もう、仕方ないわね、じゃあこうしましょ。私の質問に答えてくれたら、好きなだけ触らせてあげるわよ」
「ほんまかいな!?」
「ただし、答えるのは一つよ。それさえ守ってくれたらね」
「なんでも聞いてくれや」
「じゃあ聞くけど、あなたは何者なの?」
アリルはダイナを睨みつける。
「ワイかい?ワイは占い師やで?」
「その割にはちょっと魔力が強くねーか?」
俺も畳み掛けるように声を上げた。
「ふむ、バレてたか。じゃあ改めて自己紹介をしようやないか」
ダイナはそう言うと、急に真面目な顔つきになり、ゆっく
りと頭を下げた。