28話 サフィラの力
「リヒト、どうして貴方がここに!?それにその二人は?」
アリルは驚いているようだ。
「君達を迎えに来たんだよ。さあ、一緒に帰ろうじゃないか」
「迎えに来ただと?」
俺は眉を潜める。
「むぅ〜、私達をどうするつもりなのぉ?」
シルフは唇を尖らせながら睨みつける。
「君とは初めて会うね、シルフ」
リヒトは微笑んでいる。
「僕の名前はリヒト。よろしく頼むよ」
「私はシルフだよぉ〜、よろしくねぇ〜」
シルフはにぱっと笑顔を向けた。
リヒトは敵だというのに呑気な奴だな。
「リヒトよ。いつまで茶番に付き合わせるつもりなのだ。我が主リリス様を復活させるために一刻も早くこやつらを」
「ミノス様、貴方は一体何をするつもりなんです?」
隣にいるミノスは痺れを切らした様子だ。
その様子を見てサフィラは尋ねる。
「貴様には関係あるまい!」
ミノスはサフィラを睨みつけた。
「せっかちだなぁ、君も」
「当たり前だ、私はその為だけに生きてきたのだ。お前達に協力したのも全てリリス様のため!」
「分かったよ。イフリート、頼む」
リヒトが合図を出すと、イフリートは無言で右腕に魔力を集める。
体全身から吹き出しそうな炎の魔力が右腕に集まっていく。
そして拳を振りかざすと、その先に巨大な火の玉が現れる。
その大きさは尋常ではなかった。
「おいおい、ちょっと待てよ!これってまさか……」
俺は嫌な予感がして慌てて逃げようとするが、身体が動かない。
「そうだよ、君達は死んで魔力となり、僕達の元へと帰るんだ」
「な、なんだって!?」
こいつらは俺達を殺すつもりだ。
「冗談じゃないわ!誰がそんなことさせるもんですか!!」
アリルは両手を広げて立ち塞がった。
「今の私に加減は出来ない。……許せ、ウンディーネ」
「ヘル・フレイム」
イフリートは巨大な火の玉を俺達に向けて放った。
ゴオオオオォォォッ!
ドォォォン!!
凄まじい熱風と共に俺達の周りは焼かれていく。
熱い……!!なんて威力だ……。
「くっ……!」
俺達は必死に堪えていた。
しかし、ここで終わりなのか? こんなところで死ぬのか? まだやりたいことが沢山あるっていうのに……!
しかし爆風は何かによって周りに散らされて、俺達はまだ生きていた。
「ほう、私の精霊術に耐えるバリアを張るとはな」
イフリートは冷たい目で見つめてくる。
アリルが精霊術でバリアを張ってくれたみたいだった。
おかげで何とか助かったみたいだ。
しかし、アリルは力を使い果たしたのか、その場に膝を落とした。
「大丈夫ですか?アリルさんっ」
サフィラは心配そうに声をかける。
「え、えぇ、平気よ……」
アリルの顔色は悪い。
無理もない、あれだけの精霊力を出したんだ。
体力の限界だろう。
「ふん、抵抗したところで無駄なこと。諦めろ」
イフリートは呆れた表情をする。
しかし、イフリートの右腕が砕け始めた。
「ふん、やはり元は人間の体……脆いな」
「まだ君の体は不完全みたいだね、イフリート?」
「あぁ、せいぜいあと一発が限界だろう……」
「十分だ、頼むよ」
リヒトに命令されると、イフリートは砕け始めた右腕に再び魔力を集め始めた。
「またさっきの技が来るよぉ!みんな、もっと離れてぇ!」
シルフは叫んだ。
ゴオオオオォォォッ!
イフリートの攻撃が放たれる。
もうアリルの力で防ぐ事は出来ない。
シルフの移動魔法も間に合わない。
終わりだ、そう思った瞬間。
「仕方ありません、もうこの姿にはならないと思っていましたが……」
サフィラは両腕を広げて呪文を唱えた。
そしてサフィラの姿が見る見る内に変わっていき。
俺達の目の前に巨大なドラゴンが現れた。