23話 檻の中の女
「儀式?一体何をするつもりなんだ!?」
俺はミノスに問いただす。
「クックック……お前達が知る必要はない」
ミノスは不気味な笑みを浮かべた。
そしてその場から去っていった。
「………………」
アリルは無言のまま俯いている。
「……嫌な予感しかしねえぜ」
「大ピンチだねぇ」
俺とシルフは顔を見合わせる。
「もうお終いよ、私達はここで殺されるんだわ……」
アリルは虚ろな目で呟いた。
「アリル、まだ希望を捨てるなよ!らしくないぞ」
「……」
「俺達は今までもずっとピンチを乗り越えてきたじゃねえか」
「そうだよぉ!」
俺の言葉にシルフが賛同してくれる。
「でも、この状況じゃあ……」
アリルは精霊術が使えなくなったのが余程ショックだったようだ。
「大丈夫だって!何とかなるって!」
俺はアリルを元気づけようとする。
「……うん」
アリルは小さく返事をした。
「とりあえず、今は待つしかないよぉ」
「ああ、そうしよう」
俺は壁に背中を預けて座り込んだ。
シルフも俺の隣にちょこんと座る。
「しかし、暇だなぁ~」
「そうだねぇ~」
ここは地下牢の中。
ミノスの奴が言うには明日には儀式を行うとか言ってたけど、一体何が行われるのか。
「それにしても、あいつら何者なんだ?」
「さぁねぇ〜」
隣にいるシルフも首を傾げている。
「そもそも何で俺達の正体を見破れたんだろう?」
「うーん、わかんない」
シルフは可愛らしい仕草で腕を組んでいる。
「何か手掛かりになるようなものがあればいいんだけどな」
「あっ、それなら、ほらぁ」
そう言いながらシルフが指差した先には、壁にかけられた一枚の写真があった。
そこには二人の人物が写っている。
一人は牛の頭をしたミノタウロスの男。もう一人は小柄な少女だ。
「こ、これは、若い頃のミノス?」
写真の中のミノスは今よりもずっと若く見えた。
「なんでこんなものがここにあるんだ?」
「隣にいる女の子は誰なのかなぁ?」
俺とシルフは写真を眺めていた。
「それは、今は亡き魔王の娘、リリス様です」
突然牢屋の端から女の声が聞こえた。
まさか俺達の他に先客がいたとは。
「突然声をかけてしまってごめんなさい」
薄いピンク髪をしたその女は立ち上がると、三つ編みに纏められた長い髪を揺らしながら頭を下げた。
おっとりとした印象の顔で、年齢も身長もアリルより少し高そうだ。
ちなみに胸はかなり大きい。
「ああ、あんたも俺達と同じように捕まったのか?」
「はい、まあ……そんなところです」
「えへへ、仲間だねぇ!」
シルフは興味深々といった様子でその女を見ている。
「申し遅れました、私はサフィラと言います」
サフィラは再び深々とお辞儀した。
「私はシルフだよぉ!」
「俺はハイネ、よろしく。そんであっちにいるのがアリル」
俺は俯いたまま喋らないアリルの代わりに挨拶した。
「はい、皆様、よろしくお願いしますね」
サフィラは優しい笑顔を向けてきた。