2話 アリルの実力
「きゃあっ!?」
「アリル!」
「おい、そこを退けよ」
「誰が退くかよ!がああぁぁぁぁぁ!!!」
そう言ってカシュナは俺に向かって襲いかかってきた。
「ちぃ!」
俺は咄嵯に剣を抜き、カシュナの攻撃を防ぐ。
「くっ!」
重い一撃に腕が痺れる。
「ほらほら、もっと頑張ってくれないと困るぜぇ?」
カシュナは狂気じみた笑みを浮かべながら、更に攻撃を続ける。
「ぐはあっ!」
カシュナの攻撃で俺は吐血しながら悶絶する。
「ハイネ!くっ……許さないわ。久々に四大精霊の力を見せてあげる」
するとアリルの体が淡く輝き始める。
「アリル!気をつけろ!何か来るぞ!」
「言われなくても分かってるわよ!さあ、覚悟なさい!」
アリルの手に水の玉が浮かぶ。
「な、なんだよこれ!?」
「喰らいなさい!水弾!」
アリルの手から放たれた水の塊がカシュナの股間にクリーンヒットした。
「ぐおおおぉぉぉ!!」
カシュナは泡を吹きながら悶絶する。
「やったわ!」
「すげえ!よくあんな技を使えるよな!」
「ふふん、見直したかしら?」
得意気に笑うアリル。
「はい、とても素晴らしいと思います……!」
マナは苦しそうに胸を押さえながら答える。
「ま、まあ、当然よね。私くらいになればこの程度の魔法なんて朝飯前よ」
「凄いですよね、アリルさん!」
「そ、そう……?」
アリルは照れ臭そうに乾いた笑いを浮かべた。
俺はそんなアリルの様子を横目で眺める。
「何よその顔!何か文句あるの?」
「いや、別に?なんか照れてる感じが面白ぇなーって」
「そ、そんなんじゃないわよ!馬鹿にしてるの!?」
「いつもしてるぞ?」
俺はあっけらかんと言い放った。
「ハイネ〜〜!」
「はわわ、落ち着いてください、アリルさん」
マナは苦笑いを浮かべながら俺達を止める。
「でも、すみません。私のせいで……」
マナが申し訳なさそうに頭を下げた。
するとカシュナが後ろで息を吹き返した。
「タマがあああぁぁ!俺のタマタマがあああぁぁ!誰か医者に連れて行ってくれぇぇぇ!」
股間を押さえながら叫ぶカシュナ。
「うるさいわね!黙りなさい!」
アリルは容赦なく蹴りを入れる。
「ぐはあっ!」
「てめえ、もう容赦しねえぞ!このアマ!」
「望むところよ!」
アリルは自信満々に言い放つ。
カシュナは息も絶え絶えで睨みつけた。
「いい度胸だぜ。後悔しても知らねぇぞ」
「やってみなさいよ。変態」
「上等だ!がああぁぁっ!」
カシュナはアリルに向かって突進した。
「甘いわね!」
しかしアリルはその攻撃を軽々と避ける。
「なにぃ!?おわあぁぁ!」
カシュナはそのまま前方の壁にぶつかった。
アリルの長い青髪が揺れる。
「ぐへっ……」
そのまま床に倒れるカシュナ。
「ふん!口ほどにもないわね」
アリルは腰に手を当て、勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「ぐぬぬ……貴様だけは許せん!こうなったら奥の手を使うまでだ」
「もういいや、寝とけおっさん」
俺は後ろからカシュナの頭を殴りつけた。
カシュナは気絶した。
これ以上茶番に付き合うのは正直めんどくさい。
俺達三人は部屋から逃げると、マナを休ませる為に宿屋に向かった。
「ここが今日泊まる宿だ。年季が入ってるが立派な所だろ?ちなみに無料だ」
「そうね、悪くないと思うわ。私はもう少し新しい宿の方が好みだけど」
「仕方ないだろ、金がねーんだし」
正直壊れかけの宿だが、泊まれるだけマシだ。
もう少しで店を閉めるらしく、泊まるだけならタダらしい。
「それはそうと、これからどうするのよ?」
「とりあえず明日はギルドに行こうかと思ってる」
「ああ、とりあえず金は必要だからな」
「そうですか。頑張ってください」
「ああ、頑張るさ」
「…………」
「どうしました?」
「いや、お前らも一緒に来るんだからな?」
「ええっ!?」
「だって俺一人じゃ寂しいじゃん」
「でも私は戦う事なんて出来ませんよ?」
「大丈夫だよ。俺が守ってやるから」
「でも……」
「心配するなって。俺を信じろ」
「分かりました。そこまで言うなら……」
「私は守ってもらわなくていいわよ?この中で一番強いし」
アリルはふん、と顔を逸らした。
またこいつはこんな事を言い出しやがる。
「おいおい、それマジで言ってんのか」
「本当よ。私は四大精霊のウンディーネよ?そこらの人間に負けるわけないじゃない」
「そっか、じゃあ俺の出番はないな、自称ウンディーネ」
「うぐ、まぁ指を咥えて見てなさい?」
「ああ、そうさせて貰うさ」
「楽しみにしてなさい」
「期待してるぜ。自称四大精霊のお嬢ちゃん」
「な、なによその言い方。バカにしてるの?」
「いやいや、滅相もありません。ただちょっとイラっときただけだから」
「むぅ〜」
アリルは俺の言葉に頰を膨らませた。
はぁ、フォローするのも毎回疲れるんだよな。
「あははははっ!」
その時、突然笑い声が聞こえてきた。
「誰だ?」
見るとそこには黒髪のおばさんが立っていた。




