15話 盗賊団
「な、何が起こった?」
俺は呆然と呟いた。
「まさか、あの爆発は……」
エルバが目を丸くしながら言った。
「知っているのか、エルバ!」
「はい、あれはおそらく……爆裂魔法でしょう」
「ばくれつ魔法?」
聞いたことのない単語だ。
「はい、ごく稀に使える人間が現れるという魔法です。極めて習得が難しい魔法で、使える者は数少ないと言われています」
「そ、そうなのか?」
「でも、爆裂魔法は強力な反面、魔力の消費が激しいので、ほとんどの人は使いたがらないのですが」
「な、なるほど」
「でも、なぜこのタイミングで?」
アリルは首を傾げる。
確かにその通りだ。いきなり現れたと思ったら、派手に暴れまくっている。
一体何を考えているのだ? 俺達は混乱していた。
その時。
『我が名は爆裂魔法使いベル』
どこからか声が響いて来た。
「え? 今の声は何ですか?」
エルバが驚いたように言う。
「今のは念話よ」
アリルは落ち着いている。
「ねえ、ハイネ。聞こえる?」
「ああ、俺にも聞こえるぜ」
「どうやら、盗賊団の中に魔術師がいるようね」
「さすがだな、アリル」
「ええ、まあ、私は四大精霊ウンディーネだからね」
「そうだな、偉いぞ」
「うん、もっと褒めて」
「よしよし」
俺はアリルの頭を撫でる。
「ふふっ、気持ちいいわ」
アリルは嬉しそうに微笑む。
「でも、いつまでも遊んでいられないから、早く盗賊達を倒しちゃいましょ」
「そうだな、とりあえずは馬車の安全確保が最優先だな」
「分かったわ。じゃあ、私が道を作るから、その間に通り抜けて?」
「了解です」
「それじゃあ、いくわよ!」
アリルは両手を前に突き出して構えた。
そして、叫ぶ。
「アクア・ストリーム!!」
次の瞬間、アリルの手の先から水の奔流が放たれた。
それは一直線に伸びていき、森の木ごと待ち伏せていた盗賊達を吹き飛ばす。
「おぉ!」
俺は思わず感嘆の声を上げた。
これが、精霊の力なのか? 俺は改めて精霊の強さを知った。
「す、すごい威力ですね」
エルバも驚いている。
しかし、 ピキッ。
突如、何かがひび割れるような音と共に、視界が歪んだような気がした。
同時に凄まじい頭痛に襲われる。
ぐおおおっ! 頭が破裂しそうなくらい痛い。
「う、なんだ?」
「どうしたの、ハイネ?」
「分からない…… 急に頭に痛みが……」
俺は頭を押さえながら答える。
「大丈夫?」
アリルが心配そうに顔を覗き込んでくる。
「あ、ああ、問題ない。ちょっと頭が痛くなっただけだ」
「本当に?」
「本当だ。それより、爆裂魔法使いはどこにいった?」
「あれなら、向こうの方角に飛んでいったわ」
「なるほど、どうやら、盗賊団と一緒に吹き飛ばしたようだな」
「まぁ、死んではいないと思うけど」
「とにかく、今は急いで逃げましょう」
「そうだな」
俺達は盗賊達を一掃すると、すぐにその場を離れた。
しばらく走っていると、森を抜けて街道に出た。
どうやら、盗賊達は追って来ていないらしい。
「ふう、何とか振り切ったみたいだな」
俺は一息ついた。
「ええ、でも、油断しない方がいいわ」
「分かってる」
「それにしても、さっきの爆裂魔法はすごかったわね」
アリルが思い出すように言った。
「ああ、あんな魔法が使えるなんてな」
俺も素直に賞賛する。
「ええ、私も初めて見ました。まさか、爆裂魔法が実在するとは……」
エルバも驚きの表情を浮かべている。
「そんな奴があんなにあっさりやられるなんで、意外だったな」
「ええ、あれだけの力があれば、王国騎士団に入団できるレベルです」
「へぇ~、それほどのものなのか」
「はい、ですから、とても信じられません」
話を続けていると、街についた。
すでに日は暮れている。
「着きましたよ、砂漠の街ウェスタロスです」