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11話 精霊の姿

「くっ…………!」

「へっ、ワイの勝ちやな」


「まだよ!」


突然、アリルの声が響いた。

それと同時に、どこからか水でできた槍が飛んできた。


「うおっ!」


ダイナはその攻撃を間一髪で避けて、すぐに距離を取った。


「危なかったで。まさか、加戦してくるとはな」

「私がいるのを忘れてもらっちゃ困るわよ」


そう言いながら現れたのは、精霊の姿になったアリルだった。


「アリルか。助かったぜ」

「どういたしまして。でも、油断しちゃダメじゃない」

「すまん。気をつける」


「それが精霊の姿かいな?美しくて興奮するやんか」


ダイナは鼻息荒く言った。

正直キモいな。


だが、俺も同感だ。

今のアリルは全身が水そのものになったような、まるで水のドレスをまとっているような美しさだ。

体から溢れ出る水の魔力の輝きには恍惚とさせられる。

まさに水の女神って感じだ。

こんな綺麗なアリルを殺すなんて、絶対に許さない!


「さぁ、次は私が相手よ!」


アリルがダイナに向かって叫ぶ。


「ええんか? 四大精霊が二人掛かりでワイに挑むんか?」

「構わないわ。私はあなたを倒して、ハイネと一緒に旅を続けるの!」

「ハッハー! おもろいこと言うやないか!」


俺たち三人の周りを囲むように風が巻き起こり、砂埃を巻き上げていく。

視界が悪くなり、お互いの姿を確認できなくなった。


その時、上から殺気が降ってきた。

上を見上げると、上空高く飛び上がったダイナが落下してくるところだった。


「ハァー!!」


気合いとともに繰り出された蹴りが床を叩き割る。

その衝撃によって発生した衝撃波で部屋の壁は吹き飛ばされ、周りの木々が大きく揺れていた。


俺は咄嵯に身を翻し、何とか攻撃を避けた。

しかし、回避行動が遅れてしまい、左腕に少しだけダメージを受けてしまった。


「やるな、あんちゃん!」

「くそっ!」


俺は剣を構え直しながら、ダイナを観察する。

今の攻撃を避けることができたのは運が良かっただけだ。

少しでもタイミングがずれれば、確実に死んでいただろう。


それにしても強いな。

今まで戦ってきた魔物なんかよりずっと格が違う。

これがただの占い師か?


「今度はワイの番やで!」


ダイナは一瞬で距離を詰めてくる。

俺はまだ構えたままだ。

どうする?このままじゃジリ貧だぞ…………。

考えろ。考えるんだ。


「ほらほら! どうしたんや!?」


ダイナは休むことなく攻撃を仕掛けてくる。

俺は紙一重でそれをかわしていくが、反撃に転じることができないでいた。

くそっ!

打つ手なしか。

そう思った次の瞬間、アリルが俺の前に立ちはだかる。


「今度は私の番よ!」


アリルは両手を前に突き出すと、そこから無数の水弾を放った。


「チッ!」


ダイナは舌打ちをすると、大きく後ろに跳躍してそれを避けた。


「逃がさないわよ!」


アリルはすかさず追撃する。

ダイナはその攻撃をひょいひょいと器用に避けていく。


「ふふっ、いつまでもつかしら?」

「そんなもん当たるかっちゅうねん!」


アリルが放った水の槍をダイナは体を捻って避ける。

そして、そのまま地面に着地しようとした時だった。


突如、ダイナの足元が崩れ去る、アリルの水弾で地盤が緩んでいた。

そしてその穴の中に落ちていった。


「うおっ!?」


ダイナはバランスを崩しながらも、必死に手を伸ばして壁を掴む。


だが、それも長くは続かない。

どんどん手が滑り落ちて行き、ついには全身が穴の中へと消えてしまった。


「ふぅ、これで片付いたわね」


アリルは額の汗を拭いながら言った。


「助かったぜ」

「いいのよ。私が勝手にやったことだから」


そう言って微笑むアリルは本当に女神みたいに見えた。いや、実際そうなんだけどな。

こんな美人が俺のために体を張ってくれるなんて、男冥利に尽きるってもんだ。


…………って、何考えてんだよ! 俺は頭をブンブンと振った。

アリルは不思議そうに見てきたが、何でもないと誤魔化す。

危ない危ない。惚れちまうところだったぜ。


アリルは人間の姿に戻った。

俺は気を取り直すように、自分の腕を見た。

傷口は浅いが、結構血が出ている。

このまま放っておくのはまずいな。


「結構深い傷ね。とりあえず応急処置だけでもしておくわよ!」

「わ、悪いな……」


アリルは俺に回復術をかけてくれた。

すると、すぐに痛みも出血も収まった。

さすが回復を得意とする水の精霊だよな。

俺は改めてアリルを少し見直した。


「ここはどこなんだ?」


俺たちがいた場所は街から外れた小さな宿屋だったが、なぜか今は森の中にいる。


そして目の前には巨大な城があったのだ。

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