10話 戦いは突然に
いきなり宿屋の部屋の扉が開いた。
「邪魔するで…………」
そこには死んだはずのダイナが立っていた。
「え!?」
「え!?」
突然の出来事に驚く俺とアリル。
「なんで生きてんの?みたいな顔しとんなぁ?」
「そりゃ、まぁ…………」
「どういうわけなのよ?」
「簡単なことや。ワイはあの時、確かに死んだはずやった。やけど、気づいたらここにおったっちゅうわけや」
「どうせ、また何か小細工をしたんでしょ?」
アリルが呆れた様子で言う。
「何を言うてるんや! 今回はホンマやで!」
しかしよく見るとダイナの見た目はゾンビのようになっており、ボロボロだった。
「いや、死んでるのにどうやってここまで来たんだよ?」
「それはな、ワイが死ぬ直前、魔法陣を地面に書いておいたんや。その魔法陣に触れたもんを別の場所へ移動させる転移魔法のな。それで、この場所まで移動させたんや」
ダイナは説明を続けた。
「しかしワイの体は半分死んでしもた。残り半分をアンデット化させて、なんとか蘇生に成功したっちゅうわけや。ちなみに、この姿は魔力で維持してるだけや。ホンマは今すぐ崩れるで」
「なるほど、じゃあ、もう二度と死なないな」
「ああ、ワイは不死身になったんや。これで寿命以外で死ぬ事はない」
「…………それ、本当に大丈夫なの?」
アリルが心配そうな目でダイナを見ながら言う。
「だいじょぶやって、安心せい!」
「…………信用できないわね」
「ひどいな~」
「でも、この状態だと、あとどれくらい保つの?」
「あと、三日っちゅうとこや」
「……せやから、四大精霊であるお前の魔力を奪いにきたんや!」
ダイナの言葉にビクッとするアリル。
「ちょっと待ってくれ。こいつは関係ないだろ。それに、そんな理由でアリルを襲うなんて許さねえぞ!」
俺は思わず立ち上がり、剣を構えた。
「別に、襲うとは言ってへんで? ちょっと魔力を分けて欲しいだけや」
「同じことだろ! 俺が相手になる!」
「ふぅ、仕方あらへんなぁ。じゃあ、相手をしたるさかい、かかって来い!」
「言われなくても行くぜ!」
俺は素早く踏み込み、切りかかった。しかしその瞬間、目の前にいたはずのダイナの姿が消え失せた。
そして次の瞬間には背後に現れた気配を感じた。
俺は振り向きざまに剣を振るったが、空を切っただけだった。
まるで空気を斬っているようだった。
一体どこに消えたんだ?
「遅いで、ワイの攻撃の方が速いわ」
声のする方を見ると、いつの間にか俺の背後に回り込んでいたダイナがいた。
「くそっ!」
俺は再び斬りかかるが、やはり当たらない。
「無駄や、無駄。お前の動きは全部見えてるんや。ほら、足元が留守になってんで」
「しま――」
足元への注意が疎かになっていたため、足払いをかけられてしまった。
俺はそのまま尻餅をつくように倒れこんでしまった。
「終わりや。今度は首チョンパしたるわ」
ダイナはそう言って、俺の首筋にナイフを突きつけた。