麗羅の過去
貴船麗羅は、自然溢れる田舎に双子の妹と共に生まれた。
早くに両親を亡くし、妹の瑠莉と二人で生きてきたが、寂しくはなかった。
どんなことがあっても、二人一緒だという強い誓いがあったから。
しかし現実は残酷だった。
麗羅は不治の病にかかってしまい、あっけなく命を落としてしまう。
だが、妹を一人にさせないという強い誓いのおかげで、死にきれなかった彼女は骨だけの状態から復活し、がしゃどくろとなった。
すべては、一人身になってしまう瑠莉を案じてのことだ。
もちろん、麗羅の復活を知った瑠莉は泣いて喜んだ。
そして、再び麗羅と二人で生活するため、人里を離れて森の奥に住み始めたのだった。
しばらく麗羅は妖として過ごし、がしゃどくろの体にも慣れてきた頃、今度は瑠莉が同じ病にかかってしまう。
このままでは死んでしまうと悟った麗羅は、彼女を抱えて人里へ降りた。
そこには運良く現役を引退した陰陽師がいて、彼女を治す方法があると告げられた。
それは、がしゃどくろである麗羅の体を、瑠莉の体の一部として同化させ、半妖へと変えるというもの。半妖であれば、不治の病でも死を避けられるのだ。
その代わり、がしゃどくろとしての人格はなくなるため、瑠莉が生き残る代わりに麗羅の意識は消滅する。
もちろん、麗羅は迷うまでもなくその条件を承諾し、術を行使してもらう。
がしゃどくろの体は式神として瑠莉の内に封じられることとなり、不治の病は完治した。
だが無情なことに、その体に宿る人格は瑠莉ではなく麗羅のものとなっていた。
最愛の妹を救うはずが、なぜか自分が妹を犠牲にして彼女の体で蘇ることとなったのだ。
絶望し怒り狂った麗羅は、まず陰陽師を殺した。
里に住む人々はみな武器を取り、邪悪な妖を退治しようと襲い掛かって来た。
「――で、気付いたときには、里の人たちを皆殺しにしていたってわけよ。そのとき、蛇魂が私の前に現れたの。蜃という妖の幻惑の力を使えば、陰陽庁の目をあざむくことができるからって言われて、なにも考えられなくなっていた私は、彼について行くことにしたわ」
そこまで語ると、麗羅はポロポロと涙をこぼし始める。
辛かったのだろう。
今でも罪悪感がその細い肩に重くのしかかっているのだろう。
龍二は肩の力を抜くと、表情を和らげて告げた。
「だから泣くなって。前も言ったはずだ。人だって間違えるときはあるんだから、妖も同じだ。もしその罪を悔いていて、誰かが味方になることで救われるのなら、俺は手を差し伸べると」
「龍二、くん……」
「俺と一緒に来い。俺には麗羅が必要なんだ」
麗羅はゆっくりと顔を上げ、龍二を見上げる。
彼が手を差し伸べると、目元の涙をぬぐいその手をとった。
麗羅は手を引かれ立ち上がると、至近距離で龍二と見つめ合うことになる。
頬を真っ赤に染めて潤んだ瞳で熱っぽく見つめながら彼女は言う。
「……ありがとう」
「――な~にいい雰囲気になってるんですかぁ?」
「っ!? ら、嵐堂さん!?」
見つめ合う二人の横から桃華がジト目を向けていた。
二人は話に夢中で、彼女が起きていることにも気付かなかったのだ。
麗羅は慌てて龍二から体を離し、口をわなわなと震わせる。
「それにしても~」
――パシャパシャパシャッ!
「は?」
突然カメラのシャッター音が響き、龍二は目を丸くした。
桃華が突然スマホを取り出して龍二の写真を撮り出したのだ。
「桃華!? お前なにやってんだ!?」
「いえ、龍二さんがせっかく貴重なお姿をされているので!」
桃華は悪びれた様子もなく、写真を撮るのをやめない。
挙句の果てには「ふぉぉぉっ!」と奇声を上げながら様々な角度から撮っている。
絶体絶命のピンチだったというのに元気なものだ。
さらに、もう一台のシャッター音も聞こえた。
「麗羅まで!?」
「ご、ごめんなさい、つい……」
麗羅はそう言って手元のスマホを後ろへ隠し、恥ずかしそうに目をそらす。
急に騒がしい日常へ戻ったようで、どっと疲れた襲って来た。
「もういい。二人とも、さっさと帰るぞ」
龍二はため息を吐くと、黒災牙を鞘へ納め寺を去るのだった。
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