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悪夢の終わり

「本当に終わったの? これですべて……」


 麗羅は放心して呟き、力なくへたりこむ。

 既に妖力は枯渇し、がいしゃどくろの姿も消えてなくなっていた。


 龍二は大きく息を吸うと、呆けている麗羅の元へ歩み寄る。

 彼女の後ろで仰向けに倒れている桃華も、外傷はなく無事だ。


「……ああ、これで終わったんだ。悪夢のような日々も」


 麗羅の思いを代弁するように告げると、彼女は目を潤ませ龍二を見上げた。


「あなたは、本当に鬼屋敷くんなの? いつもと雰囲気が全然違うわ」


「ああ、鬼屋敷龍二で間違いない。妖の力を解放すると、こうなっちまうんだ」


「そうなのね。それなら鬼屋敷くん、力を貸してくれてありがとう。そして、巻き込んでしまって本当にごめんなさい」


 麗羅は居住まいを正すと、神妙な表情で礼と謝罪の言葉を述べ、深く頭を下げた。

 龍二は頬を緩ませ気にするなというように答える。


「構わないさ。それよりも、さっきの答えを聞かせてくれないか?」


「さっきの? ……って、なっ、なななななにを言っているの!? なんのことか分からないわ!」


 麗羅は先ほどの龍二のセリフを思い出したのか、一瞬で顔を真っ赤にして目をそらした。

 とてもではないが、なんのことか分かっていないようには見えない。

 彼女の心中を分かってか分からずか、龍二は首を傾げた。


「麗羅、急に顔なんて赤くして、どうした?」


「そっちこそ、急になんなのよもぅ……突然雰囲気変わるし、名前で呼んでくるし……」


 麗羅は龍二とは目を合わさず、目を伏せしおらしくなっていた。

 そわそわと髪の毛先をいじり、その様は年頃の女の子らしい。

 しかし龍二は、態度を変えることなく告げる。


「名前? そんなの気にすることじゃないだろ。俺のことだって、別に龍二でいいさ」


「そ、そういうことじゃないんだけど……まあいいわ、じゃあ龍二くんで呼ばせてもらう」


 龍二が頷くと、麗羅は少し嬉しそうに頬を緩ませた。

 しかしすぐに表情を引き締めると、眉尻を下げ辛そうに俯いた。

 わずかに肩を震わせ、スカートの裾をギュッと握っている。


「助けてくれたことは、本当に感謝してる。でも蛇魂の言っていた通り、私は多くの人を手にかけた悪しき妖、大罪人なのよ。本当はあなたに助けてもらう資格なんてないの」


「はぁ、なにを言ってるのか分からないな。助けてもらうのに資格なんているかよ。けど、お前が納得できないって言うのなら、自分のしてきたことをすべて話せ。俺が主として判断してやる」


 麗羅が顔を上げ龍二の目を見つめる。

 その瞳は不安そうに揺れ、今にも泣きだしそうだった。

 その眼差しをしっかりと受け止め、龍二が真剣な表情で頷くと、彼女はゆっくりと語り出した。


「私だって最初は人間だった――」

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