三対一
「――式装顕現『骸の腕』」
「なっ!?」
――ドゴォォォォォンッ!
突然大きな衝撃音が響き砂塵が巻き上がった。
白蛇の呪いの効果が弱まり、龍二が苦しそうに咳き込みつつ前を見ると本堂の半分が倒壊していた。
「な、なんなんだ……」
しばらくして砂煙は止み、現れた光景に目を見開く。
蛇魂がさっきまで立っていた場所には、巨大な骸骨の手の平が叩きつけられていたのだ。
その前に凛々しくたたずんでいたのは――
「――貴船さん!?」
「鬼屋敷くん、嵐堂さんも大丈夫!?」
「あ、ああ……おかげで助かった」
「良かった……」
振り向いて二人の無事を確認すると、貴船はホッとしたように肩の力を抜き微笑みを浮かべる。
その笑顔を見て、龍二は確信したのだった。
彼女はやはり『善き妖』なのだと。
一方、山門の外では――
「ちっ、一体逃がしたか……まあいい」
蜃の幻惑の妖気を落雷と共に払い、降り立ったのは雷紋重吾だった。
体からはジリジリと稲妻を迸らせ、圧倒的な存在感を放っている。
彼が突然現れたことで、幻惑の妖気で足止めされていた麗羅が山門を越えていったのだ。
大天狗と火車は怒りに妖気を膨らませる。
「お前、陰陽師か。我々の邪魔をして生きて帰れると思うなよ」
「うるせぇなぁ。上級が二体に、下級が一体だろ、楽勝だ」
「陰陽師ふぜいが、図に乗るなぁっ!」
「お、早速やる気か? 話が早くて助かるな」
大天狗が風を纏った羽扇を振り下ろし、極大の竜巻を生んだ。
それは低く唸りながら雷紋へ襲い掛かる。
愉快そうに片頬をつり上げた雷紋は、軽々と跳び退き回避。
しかしその行動は読まれていた。
「死ねよザコ!」
爆発音が響き、山門の屋根の瓦が砕けたと思ったときには、火車が肉薄していた。
顔を憤怒に歪め、両手には灼熱の炎を纏い殴りかかってくる。
その威力は炎というより溶岩に近い。
「ふんっ、殴り合いとはおもしろいな」
雷紋は両手に黄金の稲妻を纏い応戦。
拳と拳がぶつかり合い、同時に強大な妖力と呪力が激突し、その余波が空間を揺らす。 一撃一撃が重たく必殺となる。
受け損じれば死ぬという緊迫した状況だというのに、雷紋は楽しそうに笑っていた。
「気味が悪りぃんだよ!」
次の瞬間、火車が拳を突き出すと同時に熱線を放つ。
雷紋はとっさに両腕を交差し、稲妻で覆って防御するが、想像を絶する威力に押し飛ばされた。
足が地面を勢いよく擦り、数メートル後退したところでようやく止まる。
「……さすがは上級位階と言ったところか、なかなかの威力だ」
彼の腕はスーツが溶け皮膚が焼けただれていた。
靴ももうボロボロだ。
だが敵の連撃は終わらない。
「ちっ! 蜃の妖気か……」
雷紋の周囲には、既に白い霧が立ち込め視界を奪っていた。
もう山門の影も、大天狗や火車の姿も見えない。
霧の中から高く不快な笑い声が響く。
「火車と大天狗相手に、よく保ったほうだがこれで終わりだ」
「下級ごときがなにを強がってやがる」
「てめぇっ、まだ自分の置かれた状況がわかってないようだな!」
蜃が叫ぶと同時に、周囲には無数の火車と大天狗が現れ、炎と風を放ってくる。
しかし雷紋は動じず目を閉じた。
予想通り攻撃は当たらない。
「幻惑を見せるだけのザコがイキがるなよ」
「クククッ、目をつむれば幻惑から逃れられると思ったか、バカな奴だ。隙だらけなんだよ!」
蜃の声を無視し、雷紋は息を大きく吸って周囲の気に集中する。
心頭滅却。
蜃の発する不快な雑音はもう聞こえない。
ただただ、漂う妖気に神経を研ぎ澄まし、流れを読む。
次の瞬間、目を見開くと、形代を握った拳を地面へ叩きつけた。
「式術開放『神威電雷』!」
「なにっ!?」
雷紋のすぐ後ろから蜃の驚愕が聞こえた。
霧にまぎれて奇襲しようとしたのだろうが、もう遅い。
雷紋の全身が黄金に輝き、視界を覆うほどの強烈な雷を発する。
地面は大きくえぐれ、彼の周囲の空間を根こそぎ焼き払う。
――ズドォォォォォンッ!
術の発動が終わり、視界が明けたときには、雷紋を中心に大きなクレーターができていた。
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