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同じ半妖として

 嵐魔から聞いていた限りでは、よろずの会の頭首は狡猾な妖だ。

 貴船からの電話は、修羅の言う通りほぼ間違いなく罠だろう。

 最初から桃華も帰すつもりはないのかもしれない。

 だがそれでも、龍二には貴船の提示した条件を無視して、大勢で攻め込むようなことはできなかった。

 なぜなら彼女は通話を切る寸前、かすれるような小さな声で「ごめん」と呟いたのだから。


 龍葬寺は町の外れにある古びた寺だ。

 昔から妖が住まう寺だと気味悪がられ、誰も寄り付かないが実際のところはなにもない。

 龍二は公共のバスで移動し、寺へ続く長い石段の下へ辿り着いた時には、辺りはもうすっかり暗くなっていた。

 だが夜空に雲がかかっていないおかげで、視界は悪くない。


 石段を見上げると、屋根は欠け、木のツタが絡まってさびついた山門が堂々と立っていた。


「――鬼屋敷くん」


 突然背後から名を呼ばれ、内心驚いて振り向くと、そこには浮かない表情の貴船が立っていた。

 合わせる顔がないと言うように、目も合わせず伏し目がちになっている。

 それを見た龍二も、特に怒りの感情は浮かばず、戸惑うように眉尻を下げる。


「貴船さん……」


「本当に一人で来たんだね」


 彼女は残念だと言うように声のトーンを下げる。

 矛盾した言葉だ。

 自分から出してきた条件だというのに。

 だがその反応を見て、なにかしらの事情があるのだと察することができた。


「………………」


 龍二はなにも言えず、貴船の言葉を待つが、彼女は目を伏せてなにも言わない。

 しばらく沈黙が続いた。


「……どうかしたのか?」


「え?」


「いや、早く桃華のところへ連れて行ってほしいんだけど」


「そ、そうね! ついて来て」


 貴船は龍二の言葉にきょとんと目を丸くすると、慌てて石段を登り始めた。

 龍二も緊張感に気を引き締めその後ろへ続く。


 中腹くらいまで登ったところで、貴船は背後を振り向かず足も止めずに呟いた。


「……どうしてなにも言わないの?」


「え?」 


「だって、私はあなたたちを裏切ったのよ? こんな誘拐まがいのことをした私を前にして、どうして怒りをぶつけないの? 私はあなたたちに責められて当然のことをしたのよ」


「……責められるわけないだろ」


「は?」


「誰にだって事情はあるだろ。貴船さんは、俺たちを陥れたいなんて本心では思っていない。そんなことは俺にだって分かる」


「そんな……どうして……」


 貴船は声を震わせ、石段を登るスピードが遅くなる。


「だって、君も半妖なんだろ?」


「っ!」


「それなら、複雑な事情を抱えていても不思議じゃない。俺も半妖だから分かるんだよ。人からさげすまれたり妖から狙われたりして、半妖には半妖にしかない苦悩がある。だからせめて、同じ半妖の俺だけでも、その苦しみを分かってやりたいんだ」


 龍二の言葉に貴船は息をのみ肩を震わせる。

 ちょうど石段を登り終えて足を止め、彼女は俯く。

 その背中は頼りなく儚げで、悲痛に満ちたものだった。


「鬼屋敷くん、私は――」

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