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遭遇

 それからの貴船は、明らかに様子がおかしかった。

 陰陽塾で講義を受けているときも、浮かない表情で俯き、明らかに口数も減った。

 桃華や他の女子たちが心配して声をかけるも、無理して笑みを浮かべるだけで悩みを話そうとしない。

 

 もしかすると、先日の質問への回答が原因なのかと思い、龍二は気になっていた。


「――貴船さん」


「え? 鬼屋敷くん?」


 塾の講義が終わり、龍二が声をかけると貴船は戸惑うように瞳を揺らす。

 だがすぐに立ち上がって教室の外へと歩き出した。


「ごめん、急用があるから」


 彼女は素っ気なくそう言って、さっさと教室を出て行ってしまった。

 唖然と立ち尽くす龍二に、帰り支度を済ませた桃華と修羅が歩み寄って来る。


「貴船さん、いったいどうしたんでしょうか……」


「桃華はなにか聞いてないか?」


「いいえ、悩みがあるなら相談に乗ると言っても、なにも話してくれないんです」


「屋敷の近くをうろついてたことといい、なんか怪しいな」


 修羅は眉間にしわを寄せ、険しい表情で呟く。

 なにかあることは確かだが、龍二はただただ心配だった。


「どうしたもんかな……」


 龍二はため息を吐くとさっさとノートをバッグへ仕舞い、二人と共に塾を出るのだった。


 龍二たちは塾の近くの路地を歩いて行く。

 もう日は暮れているが、繁華街から漏れてくる煌びやかな光のおかげで道がよく見える。

 前を歩く桃華と修羅は、いつものように喧嘩していた。


「いつも屋敷から来るまで、龍二さんから離れて歩いていますけど、護衛の自覚あるんですか?」


「ああん? お前には関係ねぇだろ」


「図星ですか。もし龍二さんが襲われでもしたら、武戎くんでは守れそうにありませんね。やっぱりあなたは護衛に不適格だと雪姫さんに伝えます!」


「なんだと!? そういうお前こそ、いつもいつもまとわり着いてくんじゃねぇ」


「ふーんっ、別に帰り道が同じだけですから!」


「ちっ、邪魔な奴だ」


「なんですってー!?」


 龍二はため息を吐く。

 毎日毎日よくも飽きないものだ。

 むしろ仲が良いのではないかとさえ思う。


「……ん?」


 そのとき、龍二はどこからか視線を感じ立ち止まる。

 桃華と修羅もすぐに龍二が着いて来ないことに気付き、背後を振り向いた。


「龍二さん?」


「なにかあったのか?」


 龍二が慎重に周囲を見回していくと、視線の主を見つけた。

 (うれ)いを帯びた暗い表情でこちらを見ていたのは、貴船麗羅だ。

 龍二が声をかけようとするが、彼女はすぐに駆け出し、繁華街のほうへと走り去ってしまう。


「待ってくれ!」


「え? 龍二さん!?」


「お、おい!?」


 龍二は二人の声を無視して貴船の後を追う。



「――くそっ、どこに行ったんだよ」


 繁華街の真ん中で立ち止まった龍二は、肩で息をしながら呟く。

 居酒屋やバーの立ち並ぶ通りを走り抜け、貴船の後ろ姿を追っていたはずが、人波に飲まれ完全見失ってしまっていた。

 ここからでは曲がり角が多く、どこを探せばいいかすら分からない。

 

「貴船さん……」


 龍二は焦燥感のようなものを感じていた。

 自分の知らないところで、なにか大変なことが起こっているような嫌な予感だ。

 とにかく、通行人を避けながら彼女の姿を探し続けるが、一向に見つからない。

 焦りが募り、駆け出そうとしたそのとき――


「――おっとっ……」


「す、すみません!」


 龍二は焼き鳥屋から出て来た男とぶつかりそうになってしまった。

 相手は驚いたものの、龍二がギリギリで身を捻ったため無事だ。

 慌てて謝り再び走り出そうとする龍二だったが、急に腕をつかまれた。


「……待てよ」


「は、はい?」


 自分の腕を掴んでいた男を見ると、短い金髪を逆立てた三十代ほどの男が険しい表情を浮かべていた。

 体格が良く質の良いグレースーツを着崩しており、鋭い眼光もあって迫力がある。

 どうやら、ぶつかりかけておいてすぐに立ち去ろうとしたことが気に喰わなかったらしい。

 今にも殴りかかってきそうな雰囲気だが、龍二は気にせず腕を振りほどこうとする。 


「す、すみません、急いでるので!」


「待てって言ってんだろ」


「痛っ」


 つかまれた腕がギリギリと圧迫され痛んだ。

 簡単に振りほどけると思っていたが、想像以上に強い力で握られていた。

 

「――雷紋局長?」


 龍二が困惑していると、焼き鳥屋から新たに二人、紺のスーツを着た男たちが出て来た。

 こちらはきちっとした服装で、目の前の男のようにスーツを着崩したりしていない。

 彼らが眉をひそめ、龍二と男を見回していると、雷紋と言われた金髪の男は言った。


「おい、なんでこんな往来に『妖』がまぎれ込んでんだ?」


「え? あんたたち、まさか……」


 龍二は固まる。

 彼らの正体にある程度の予想がついたのだ。


「陰陽庁だ。少しツラ貸してもらおうか、妖」


 有無を言わさない圧力に、龍二は従わざるを得なかった。

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読者様の本作への印象を知りたいので、広告の下にある☆☆☆☆☆から作品の率直な評価をお願いしますm(__)m


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