忠臣
――ズザァァァァァンッ!
突如、目の前で右から左へと地面を砕きながら巨大な衝撃波が走った。
敵は突進を止めて飛び退く。
強風の吹き荒れた後には、地面が大きく裂け、まるで龍二と敵とを遮る境界のようだ。
「これは……」
既視感を感じた。
般若と遭遇したときに自分を救ってくれた謎の攻撃だ。
だが前回とは違い、今回はその正体を現す。
「――遅れて申し訳ありません、龍二様」
「……え?」
目の前にあったのは、見覚えのある大きな背中だった。
紫の竜紋の刺繍がされた灰色の羽織に行灯袴を着た、白銀の髪の男。
以前、夜に不良たちと遭遇したとき、助けに入ってくれた謎の男だ。
しかし前は妖気を感じられなかったが、今は強大な妖気を身に纏っていた。
「お下がりください。あやつは私が片付けますので」
銀髪の男は龍二へ横顔を向け、そう言った。
龍二にはなにがなんだか分からなかった。
彼が何者なのか、なぜ自分を助けるのか。
「――陰雷」
そのとき、龍二の視界から鬼面の男の姿が消えた。
声を上げようとしたときには既に遅かった。
――キィィィィンッ!
銀髪の男が目にも止まらぬ速さで腰の刀を抜き、瞬時に距離を詰めた敵の刃を受け止めていたのだ。
だがそれだけでは終わらない。
互いに刀を引き、無数の剣閃が走る。
次々と火花が散り、数え切れない激突音が響くが、龍二には目で追えない。
最後に大きな金属音が響いたかと思うと、鬼面の男が飛び退いて距離をとっていた。
「貴様、何者だ? 俺の邪魔をするつもりか」
敵が苛立ちを滲ませた声で問う。
白銀の男は、龍二を一瞥すると名乗った。
「龍の臣・元頭首補佐『鬼鼬』の『嵐魔』」
「んなっ……」
龍二は目を見開く。
彼が父の百鬼夜行の一員であることは、ある程度想定していた。
しかし、まさか頭首補佐だったとは想像だにしなかった。
事実上の百鬼夜行・龍の臣におけるナンバーツー。
もちろん、その事実に驚いていたのは龍二だけではない。
「バカな……龍の臣の幹部は、頭首がいなくなって去ったんじゃなかったのか……」
「我が忠義、お前ごときの尺度で図るなよ、半妖」
「貴様……」
挑発するような嵐魔の言葉に、雰囲気を変える鬼面の男。
懐から形代を取り出し、くしゃりと形が変わるほど握りしめる。
「頭首補佐、鬼鼬……知っているぞ。側にいながら頭首を守れなかった奴が、今さらしゃしゃり出てくるなっ――式術開放『紫電』!」
怒りの叫びと共に雷鳴が轟き、巨大な薄紫の電撃が迫る。
嵐魔の横顔はわずかながら、悔しげに歪んでいた。
それと同時に纏う妖気も鋭いものへと変わり、刀の刀身へと吸い込まれるように風が集まっていく。
「断風」
刀を両手で握り上段から振り下ろす。
強大な妖気を風に変えた斬撃は、空を裂き強烈な衝撃波となって地面を砕きながら進む。
そして紫電と激突し轟音を響かせた。
「ぅっ!」
強大な力は弾け、電撃と衝撃波が四方八方へ飛散する。
電撃は地面を砕き、衝撃波は周囲の壁を破壊して砂塵を巻き上げる。
しかし龍二は、目の前で嵐魔が盾になっていたため無傷だった。
対する鬼面の男は斬撃の余波を受けたようで、コートはところどころ裂けて鬼の仮面もひび割れ、右手からは血が滴り落ちている。
嵐魔は刀を横へ払うと厳かに告げた。
「俺は確かに守れなかった。そんな奴が頭首補佐を名乗るなど、許されていいことではないだろう。だが、あのお方に誓ったのだ。もう二度と、主を奪わせはしないと」
その言葉には、確かな決意と熱い想いが籠っていた。
疑いようもなく、彼も父に仕えた妖なのだと龍二は確信した。
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