乱入者
そのとき、路地裏へ稲妻が迸り、眩い雷光が視界を覆った。
「――式術開放『雷滅砲』!」
強大な電撃を収束した一撃。
通りのほうへ背を向けていた首なしは、振り向いたと同時に直撃して吹き飛んだ。
そのまま奥の壁へ衝突し、コンクリートを砕いて体をめり込ませる。
「武戎っ!」
乱入してきたのは龍二だった。
彼は横たわる武戎へとまっすぐに駆け寄る。うつ伏せの状態から上を向かせると咳き込んだ。
全身傷だらけで血まみれだが、貫通した腹部の傷が一番深い。
「しっかりしろ!」
「……バカ、なんで来た!?」
「バカはお前だ! 一人で勝手に出て行きやがって!」
武戎は荒い呼吸を繰り返しているが、意識ははっきりしている。
妖は物理的な攻撃ではそう簡単に死なないが、それは半妖も同じだ。
龍二は周囲の陰陽技官たちの死骸を見渡し顔を歪める。
顔に怒りを滲ませ奥へ目を向けると、敵は悠々と歩き出していた。
「あれが首なし鬼……」
左腕がなく服もボロボロだというのに、圧倒的なまでの存在感を放っている。
ただ遥か前方を歩いているだけなのに、眼前に刃物を突き付けられているような緊張感がある。
静かなる殺気が肌に突き刺さり、自分が死の淵に立っているのだと嫌でも認識させられた。
龍二はこれまでにない緊張感に顔を強張らせながらも、首なしから目を逸らさず武戎へ問う。
「体のダメージは?」
「ほっとけ。今の俺ならすぐに回復する」
「そうか。なら走れるな。ここは一旦逃げるぞ」
「バカ言うな! 俺はここで奴を殺す。逃げるなら勝手にしろ!」
「別に諦めろと言ってるんじゃない! 今は一旦退いて、体勢を立て直すべきだって言ってるんだ!」
二人が言い合っている間に、首なしが歩きながら太刀を振るった。
まだ十メートルほど距離があるため斬撃が当たるはずもないが、なにかしらの遠距離攻撃があると龍二は直感する。
「界」
目の前に呪符を放って障壁を張った直後、武戎が叫ぶ。
「バカ!」
そして横から蹴り押された。
――ズサァンッ!
龍二の体が左へズレたすぐ後、呪符が真っ二つに裂かれ、背後の地面が砕けて縦一直線の亀裂を作った。
「なっ!?」
龍二は驚愕に目を見開き、首なしを見る。
彼はただ太刀を振るった体勢のままで、特に強力な妖気を放った痕跡はない。
斬撃による衝撃波だ。
だが、ただの衝撃波ではなく、術を切り裂くほどの威力を持っている。
そのとき、龍二はようやく気付いた。
陰陽技官たちの死骸の周辺に、切断された呪符が落ちていることに。
「くそっ」
忌々しげに顔をしかめる龍二。
今の一撃ですべてを理解した。
首なしに狙われている限り、彼の間合いの中であり、この場からは逃げ切れない。
だが武戎は違う。
「お前だけでも逃げろ。奴の狙いは俺だ」
そう言って龍二は立ち上がり、表情を引き締める。
武戎は激痛にうめきながらも声を荒げた。
「ふざけるな! そいつは俺が殺すと言ったろうが!」
「その傷じゃ無理だ」
龍二は形代を握ると首なしへと歩き出す。
武戎から距離を離すために。
そして首なしも、太刀を肩に担ぐと駆け出した。
「バカっ、よせ! お前の太刀打ちできる相手じゃねぇ!」
武戎が必死に叫ぶが、龍二は足を止めない。
実際のところ足の震えが止まらないが、どうにか逃げ切るための方法を考える。
そのためには大きな隙を作るしかない。
背負っている黒災牙を抜けば、どうにかなるかもしれないが、龍の血を制御できる保証がないため、逃げるための手段としてはリスクが高すぎる。
彼は形代を強く握って胸に当て、雷丸へ念じた。
(雷丸、どうか俺に武戎を――仲間を助ける力を貸してくれ!)
次の瞬間、トクンと心臓が脈打つ。
頭に浮かぶまま、その名を叫んだ。
「――式装顕現『龍刀・雷斬』」
「!?」
形代を握る龍二の手が眩い雷光を放ち、稲妻が発散したときには一振りの刀が握られていた。
龍刀・雷斬。
雷丸の愛刀で、荒れ狂う雷を宿し電撃によって敵を焼き払う刀だ。
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