復讐を果たすとき
その頃、武戎修羅は心底待ち望んだ邂逅を果たしていた。
「熊? これがか? バカ言ってんじゃねぇよ」
高揚感を抑えられず、声を弾ませる武戎。
そこは商店街のただ中にある広い路地裏。奥は行き止まりで、周囲の建物の背が高いため光は当たらず仄暗い。
彼の目の前には、無数の陰陽技官の死骸が転がっていた。
上半身と下半身を切断されていたり、腕を斬り落とされていたり、首を綺麗に切断されていたりと、むごいものだった。
猟奇的な殺人事件でもこんな光景はそうそう見れるものではない。
暗い視界も相まって、血は黒く見え、まるで奈落の底に広がる闇のようだ。
その血の海の奥に立つのは、灰色の小袖の上に縞合羽を羽織り、脚絆で締めた足に足袋を履いた、江戸時代の旅人のような侍。ただし、首から上はなく布を首元に巻いている異形の者だ。
左は腕から先がなく袖をはためかせ、籠手を装着した右手に刃渡り二メートルほどもあるとてつもない長さの太刀を握っていた。
「このときをどれだけ待ち望んだか」
武戎の顔が凄絶に歪み、剥き出しの牙は獲物を貫かんと勢い良く伸びる。
全身から禍々しくどす黒い妖気が溢れ出し、筋肉が硬く肥大化していく。
燃えるような赤髪は腰ほどまで伸び、ガタイの良くなった体は犬の毛皮が濃くなり身長も二メートルは超えた。
獰猛な息遣いで唸る武戎は、両手を地に着いて四つん這いになり、犬のような恰好をとって爛々と輝く琥珀色の瞳で首なしを睨みつけた。
「ウヲォォォォォッ!!」
犬神化した武戎の憤怒の叫びが路地裏へ響き、ゆらゆらと佇んでいた首なしがようやく体を武戎へ向ける。
そして太刀を振り上げると、地を蹴り瞬時に肉薄。
――キィィィィィンッ!
「?」
首を断つ軌道で振り下ろされた一太刀はしかし、武戎が鞘から抜いた刀に受け止められていた。
刃こぼれが酷くギザギザで今にも折れそうなボロボロの刀。
彼は片手を地についたまま、首なしの太刀を押し返す。
首なしはふわりと跳ぶと、距離をとって着地した。
「焦るなよ。てめぇはコイツで斬り刻んでやるんだからな。なぁ、相棒」
次の瞬間、武戎の声に反応したかのように刀がドクンドクンッと脈打つ。
まるで生きているかのようだ。
手から柄、柄から刀身へと犬神の妖力が流れ込んでいく。
その刀は以前、犬神に縁のある地だという祠を訪れ、手に入れたもの。
犬神と同化した武戎にはすぐに分かった。
生前、犬神の首を刎ねた刀だ。
その名は――
「――妖刀・宿怨大太刀!」
ドクンッ!
名を呼ばれた刀は大きく脈打ち、禍々しい妖気を纏って変貌する。
武戎が刀を横へ振り払うと、宿怨大太刀は巨大な刃となっていた。
刃幅は広く刃渡りも長くなって柄は焦げ茶色の毛皮に覆われ、巨大な岩をも斬れそうな大剣。
武戎は左手を地に着いたまま大太刀を担ぎ、足に力を込める。
「このときをずっと待っていた。たとえ、腕や足をもがれようと、首だけになろうとも……てめぇは俺の手で殺すっ!」
武戎は地を蹴り、砲弾の如く凄まじいスピードで飛び出した。
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