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孤独な戦い

「そんなことが……だから、陰陽庁に最も近い陰陽塾に入ったのか」


 龍二は苦しげに頬を歪め呟く。

 武戎の半生は想像を絶するものだった。

 同じ半妖だというのに、自分がどれだけ恵まれた環境にいたのかと思い知る。

 しかし武戎は、幼少の話をするときは怒りや憎しみを抑えるように話していたのに、極道に拾われてからは懐かしむように穏やかな表情だった。


「確かに俺は、小さい頃から半妖であるせいで力が強かった。『おじき』はそれを利用するために、俺を裏の世界へ引きずり込んだ。世間様からすれば、ろくでもねぇ極悪非道な人間に見えるのかもしれねぇ。それでもな、俺にとっては生きる道を示してくれた唯一の恩人だったんだ。だから、それを奪ったあいつだけは許さねぇ」


「っ!?」


 龍二は目の前の光景に息をのむ

 かたく拳を握りしめる武戎からは、凄まじい妖気が溢れ出していた。

 それに呼応するように体が脈打ち、全身に巻いている包帯の隙間から見える肌は、焦げ茶色の毛で徐々に毛深くなっていく。さらに髪も目に見えて伸び牙や爪が鋭くなって、包帯がパンパンに張っていることから体も肥大化しているようだ。

 おそらくこれが犬神の呪いの力。

 憎悪の感情が妖力となって彼に力を与えているのだ。


「……首なし鬼がこの町で目撃されたっていう情報は?」


「もちろん知ってる。だから般若の野郎に居場所を吐かせようとした」


 これでようやく昨夜の状況と繋がった。


「それなら、もう般若の相手はしなくていい。首なし鬼の狙いも俺に違いないから」


「だろうな。だから、お前を(おとり)に――」


「――俺が囮になって、首なし鬼を呼び寄せるよ」


 武戎の声にかぶせるように龍二が提案し、彼は驚いて固まった。

 まさか、自分からそんな危険な役を買って出るとは思わなかったのだろう。

 だが龍二も本気だ。

 雪姫たちは危険だと止めるだろうが、彼ら悪鬼組の行動は早すぎるのだ。

 龍二が力を開放したのは、まだ一回のみ。

 それでここまで迅速に対応できるのには、違和感を覚える。

 それに――


『――たしか、龍の血の持ち主も半妖だと鬼夜叉殿が言っていたが……』


 般若の言葉から察するに、龍二の事情を知る妖が悪鬼組の中か、その背後にいる可能性がある。

 だから、彼らから情報を得なければならない。

 そのためには誰かの協力が不可欠で、武戎の目的が最も合致しているのだ。

 武戎はさぐるように、眉をしかめて龍二の目を見ながら問う。


「お前、正気か?」


「なに言ってんだよ。正気で半妖やってられるか」


 龍二は笑いながら言い放つ。

 その言葉に、武戎も少し表情を柔らかくしたのが分かる。

 満足した龍二は立ち上がって部屋の外に出た。


「よしっ、まずは情報収集だ。また夕方になったら帰って来るから、それまではちゃんと寝て、怪我を治しておけよ? なにかあったら、厨房のほうに雪姫もいるから」


「言われるまでもねぇよ」


 武戎が薄ら笑いを浮かべて吐き捨てると、龍二は満足したように頬を緩ませると寝室を出て行った。

 

「……変な奴だ」


 足音が遠ざかりやがて聞こえなくなると、武戎はそう呟き立ち上がった。

 先ほどまで怨恨で増幅されていた妖気は元に戻り、髪の長さや毛、肥大化していた筋肉なども普段の姿に戻っていく。

 完全な人間の姿に戻ったときには、火傷はほとんど完治していた。

 武戎は邪魔な包帯を取り払うと、布団の横に置いてあった愛刀を手に取る。


「これは、俺の戦いだ――」

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