表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/90

屋敷を守る妖たち

「ねぇねぇ~龍二さまが来てるってほんとー!?」


 勢いよく戸襖(とぶすま)が開け放たれると同時に、喜びに満ちた鈴を転がすような可憐な声が飛び込んで来る。

 八重歯を覗かせて弾けるような笑顔を浮かべ乱入して来たのは、和ゴスの衣装を着た中学生くらいの少女だった。

 桃色の髪でツインテールを作り、黒目がちな瞳を輝かせた小動物のように愛らしい顔。

 赤い帯は腰の後ろで大きなリボンのように結ばれ、花柄の黒い振袖だが裾はミニスカのように短く、ピンクと白の縞々(しましま)模様の二―ソックスがよく似合っていた。

 彼女は龍二を視界に捉えると満面の笑みを浮かべる。


「あぁーっ! 龍二さまだぁー!」


「おっとっ……」


 胸元へ飛び込んで来た美少女を反射的に受け止める龍二。

 少女は至近距離で龍二を見上げると、幸せそうににぱぁっと笑う。

 同時に隣で、桃華が悲鳴のような声を上げた。


「んなっ!?」


 だが龍二とて彼女に見覚えがなく、なんだか懐かれているようだがその理由に心当たりがない。

 パッチリとした目にあどけない笑顔で上目遣いに見つめられると、その魅力に負けてしまいそうだ。

 誰がどう見ても美少女で、アニメにでも出てきそうな和ゴスが似合っていて可愛らしい。

 横からなんだか負のオーラが漂ってきたが、怖くて桃華のほうを向けずダラダラと冷汗を流す。

 すると、雪姫がたしなめるように言った。


(りん)、お行儀が悪いですよ」


「えぇ~? いいじゃ~ん! せっかく龍二さまとお話しできるのにぃ」


「えっと……この子は?」


 龍二は雪姫へ目を向け、自分の膝の上に座った美少女の正体を聞く。

 すると、不服そうに口を尖らせていた少女が龍二へ笑顔を向けた。


「鈴はねぇ、座敷童子(ざしきわらし)なんだよぉ?」


「座敷童子?」


 龍二は意外な答えに目を丸くする。

 どうやら『鈴』というのは名前のようで、座敷童子という妖らしい。

 その名は龍二も聞いたことがあるほど有名だ。

 イタズラ好きな妖で神出鬼没(しんしゅつきぼつ)だが、それが住み着いた家には幸運が訪れるという。逆に出て行ってしまえば、その家に不幸が訪れるともいう。

 横の桃華も、未だに頬を引きつらせてはいるものの、もの珍しそうに鈴を眺めまわしている。


「鈴の力は、この屋敷に妖気の結界を張り、招かざる者を入れないようにすることです」


「私が龍二さまを守ってあげるんだから!」


「もしかして、二人は俺たちがいない間ずっとこの屋敷を守ってくれていたのか?」


 雪姫は慈愛の笑みを浮かべゆっくりと頷き、鈴もうんうんと首を縦に振った。

 父は素晴らしい仲間に恵まれていたのだと、しみじみ思う。そして、それに嬉しさを感じると共に羨ましくも思う。

 龍二が「ありがとう」と礼を言うと、なぜだか鈴がクスクスと笑った。

 

「……ひっ!」


 直後、桃華が悲鳴を上げる。

 不審に思った龍二が桃華の視線の先を追うと、いつの間にか現れた異質な光景に息をのんだ。

 

「な、なんだあれは!?」


 周囲の障子のあらゆるところに、亀裂が生まれ目玉を開いていたのだ。

 その血走った目玉はギョロギョロと龍二のほうを向いている。

 これも妖に違いない。

 龍二が眉を寄せて警戒していると、雪姫は笑みを崩さず告げた。


「彼は目々連という妖です。私たちと同じく、この屋敷で頭首様に仕えていました」


「そうだったのか。でも急に出て来て、おどかすのはやめてくれ」


「違う違う、目々連はぁ嫉妬してるんだよ~」


「え?」


「はい。彼もこの屋敷を守り続けてきましたから」


「でもねぇ、目々連てば、ドロボーさんが入って来たときに、目を開いて驚かせて追いだすくらいしか働いてないんだよ~」


 鈴は無邪気なだけに容赦がない。

 目々連は余計なことを言うなとばかりに、鈴を睨みつけるが、彼女は楽しそうに笑いながら無視している。

 どうしてここが妖怪屋敷と呼ばれていたのか、本当の理由が龍二には分かった気がした。


「そうだったのか……目々連も今までありがとう」


 どこに目を向ければいいか分からないが、龍二は正面へと頭を下げた。 

 すると、目々連は嬉しそうに無数の目を細めた。

 こうしても見ると、可愛らしい……かもしれない。桃華は顔を青くして、げんなりした表情で斜め下を向いているが。

 龍二は苦笑すると、キョロキョロと周囲を見渡す。


「もしかして、まだ他にも?」


「はい。あと一体、龍二様にご紹介したい妖がいます。どうぞこちらへ」


 雪姫はそう言うと立ち上がる。

 長時間正座していたというのに、足は痺れていないようだ。これも妖だからだろうか。

 ちなみに、龍二は鈴の乱入のおかげであぐらを掻いていたが、隣の桃華はずっと正座していたせいで足が痺れ悲鳴を上げている。

 しかし雪姫は容赦なく戸襖を開け、縁側へ出るので、龍二も鈴を横へどけて立ち上がり後へ続く。


「りゅ、龍二さ~ん、置いていかないで~」


「ふふっ、お姉ちゃ~ん、鈴が介抱してあげるよ」


「へ?」


 鈴が新しいおもちゃを見つけたかのように目を輝かせ、手をわきわきさせている。

 桃華の顔が恐怖に引きつり、「助けてくれ」と龍二に潤んだ目を向けてきた。

 龍二は見て見ぬふりをして部屋を出ると――

 

「ぎゃーーーーー!」


 桃華の悲鳴を遮るように、後ろ手で戸を閉めた。

※↓のご協力お願いしますm(__)m


読者様の本作への印象を知りたいので、広告の下にある☆☆☆☆☆から作品の率直な評価をお願いしますm(__)m


また、私の活動を応援くださる方は、『ブックマーク追加』や『レビュー』も一緒にして頂けると大変助かります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ