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魔物使いのバート  作者: カケル
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第4話

バートの意識が戻る。

視界がぼやけ、そして、呼吸もキツイ状態。

麻痺しているから、痛みは感じないが、動けない。

何かが腕をはっていくような気がする。

ズキッと腕の痛みが走ったと思ったら、体中のしびれが失われる。

飛び起きる。

深呼吸しながら、状況を確認する。

武器は持っている。放してはいない。

しびれを切らしたゴブリンの一匹がバートに襲い掛かってきた。

剣先をゴブリンに突き刺す。喉を突き刺し、血しぶきがバートを染めた。

力尽きるゴブリン。それと同時に青銅の剣も折れる。

バートも膝を地面につけた。毒矢の影響がまだ残っているのだ。

しかし、この状態で休んでいてはゴブリンに殺される。

何か武器になりそうなもの、バートは道具袋の中に手を入れる。

コツンと指先が触れ、ピリッとした感触、静電気のようなそんな感触が走った。

それを一気につかみ、勢いよく取り出す。

火事場の馬鹿力なのか、体が急に動くようになった気がする。

取り出したのは、古くなったゴブリンの大腿骨。一番大きい骨である。

でも、何か足りない気がした。

だから、バートは自分の近くにあるゴブリンだったものの脚を股関節から切り落とす。

(ん?俺は、今、何で切り落としたんだ?)

そして、ゴブリンの脚を左手でつかむと、立ち上がる。

体が軽くなっていた。

その場で数回飛び跳ねると、入り口近くのゴブリンめがけて右手の「それ」を投げる。

頭に短剣が突き刺さった。弓が折れ、ゴブリンは絶命する。

『一応、使えるようになったね。モンスターを!』

スライムの声が語りかけてきた。

「モンスター使いって……えっ?」

『そう、モンスターを使うってこと!

ゴブリンからは短剣が出来るみたいね。そして、バートが作ったのは双剣!』

左手にも短剣が握られていた。

ふと、両腕がプルプルとした何かで守られていることに気づく。

『スライムガントレットっていうのかな?

とりあえず、腕の傷を治すのと、能力の効果発動が一番やりやすい形になっているみたい。

でね、やっと解毒出来たから、本気でいけるよ』

さて、この左手にある武器は双剣であるわけだ。

(あの武器を取るか、それとも……)

足元のゴブリンだったものを見下ろす。

ここからまた武器にすることは可能だとは思うが、そんな時間を与えてくれそうにもない。

『右腕を剣に向かって振ってみて』

スライムの声がする。バートはその声に従った。

右腕から延びるそれは、ゴブリンの頭に刺さった短剣にベチャッと当たった。

こっちに引き寄せるとそれは勢いよくバートの手元に収まる。

「鞭?」

『そう、スライムの力を使うと鞭になるんだよね』

右腕のプルプルしたやつに鞭は収納されていく。

ゴブリンたちの動きが止まった。

この部屋から逃げる可能性もある。

「ここで、使い方を……学ぶ」

何ができるかわからないが、それでも、両手の短剣は力をバートに与えてくれているようである。

逃げられないと判断したのか、ゴブリンたちが一斉にバートに飛び掛かる。

攻撃していきながら、戦力をそいでいく。

部屋に入ってきたゴブリンは全滅させた。バートは大きく深呼吸をし、一息ついた。

「ゴブリン、イなくなっテいると思っタら……」

入り口をかがんで何かがヌッと入ってきた。

その後ろから、ワラワラとゴブリンもやってくる。

「魔力ガ失われテいるから、ゴブリンを増やせなイだロ」

トロルである。

右の腰にぶら下げている禍々しいツボをなでながら、バートを見下ろす。

「え、この遺跡にゴブリンだけじゃなく、トロルも?」

『気を付けて。あのツボ、たぶん、マジックアイテム』

トロルがマジックアイテムを使うなんて、聞いたことがない。

「とりあえず……」

トロルの足元でヘラヘラしているゴブリンに向かって石を投げる。

怒りで数匹、ゴブリンがバートに襲い掛かった。

「ソの武器のせいか。魔力が失われテいるのは」

バートは切ったゴブリンを見る。劣化の速度が速かった。

「え、どういう……」

入り口付近で殺したゴブリンはすでにボロボロの骨になっていた。

他の場所のゴブリンも同様である。

『他の魔力を利用しないとね。今のキミだと力不足だって言ったでしょ?』

それにしても、個体での劣化に違いがありすぎているような……

そんなことを考えていたら、

『短剣との接触している時間とか、ゴブリンの魔力とか、そういうやつだねぇ』

などと言ってくる。

バートはダッシュしてトロルとの距離を詰める。

鞭の能力でゴブリンをほふる

トロルは持っていた槌を振り下ろした。

滑り込むようにしてそれをよけると、右足に向かって短剣を振る。

わずかな傷口が出来ただけである。

「くそっ、硬い」

分厚い皮膚は、なかなか短剣による傷を受け付けない。

トロルもジッとしているわけでもなく、右足を上げ、バートを踏みつけようとする。

『うーん、少しは魔力が削れたんだと思うんだけど……

あ、トロルの血でハンマー作れるようになったよ。一度だけしか作れないけどね』

一度だけでも、使いどころによっては良い攻撃になるはずなのだが……

それでも、バートが使えるハンマー程度の攻撃力であのトロルを倒せるほどになるのか、いささか疑問が残るわけだ。

「スコし、チクッ、トした」

トロルは右足の血を指先で拭い、そのままツボの中に入れる。

そのツボの中身を撹拌させ、中身を地面に撒いた。

ドロドロとしたヘドロのようなものの中から、一匹、二匹と、ゴブリンが沸いて出てくる。

合計、5匹が出てきた。

ゴブリンの出現と同時に、ヘドロは蒸発して消えていく。

「やっパリ、足りなイ」

空気中の魔力が失われている事を実感しているのだろう。

そもそも、無尽蔵な魔力を持っていないのにマジックアイテムを保有しいているのもおかしいとは思っている。

「とりあえず、あのゴブリンを消しておかなきゃな」

トロルの血から作られるハンマー、それの試してみるのも一つかもしれない。

振り回すだけで、今いるゴブリンはとりあえず消せる。

トロルに一撃を喰らわせるというのも可能なのかもしれない。

短剣を消し、ハンマーに切り替えた瞬間、重さでバートは動きが止まる。

球体に棒がついただけのハンマーなのに、重さが尋常じゃない。

何とか、持ち上げるが、振り回すのにも一苦労しそうなレベル。

それを好機と思ったゴブリンが一斉に近寄る。

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