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魔物使いのバート  作者: カケル
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第2話

それから、数年後……

「ここに、この世界を変える存在があるっていうんだな」

遺跡を前にして、少年はつぶやく。足元のそれがプルプルと反応する。

「あの日、俺は何もできなかった。でも、あの頃の世界は好きだった。あの頃の世界に戻したい」

右手をギュッと握りしめる。

(ここまで一生懸命やってきたんだ。数々のモンスターを倒し、ボロボロになりながらも、このスライムを相棒として頑張ってきたんだ。

スライム使いのバートという名前までついてるくらいには旅人として活躍してきたと思っている)

そして、バートはついに、ここの遺跡を探し当てたということだ。

魔物が住み着いているかもしれないこの遺跡に、この世界を変える何かがある、そう聞いている。

ただ、それを目指したものはいうのだ。「そんなものはなかった」と。

でも、本当にそんなものはなかったのか、しっかりと確かめてみたい。そんな思いでやっと遺跡にたどり着いたのである。

遺跡に入る。多くの冒険者達がこの遺跡に入っているからか、比較的移動しやすくなっている。草木は切られ、むきだした土は踏み固められている。

そして、ところどころに生物の骨。

そういうものでも、何かしらの武器になるのではないかと思い、バートは手ごろなものを拾う。

プルルッとスライムが震えたと思ったら、大きな音が響く。

背後を振り返ると、ゴブリンが数匹、こちらを見ていた。

バートは武器を取り出す。青銅の剣。初心者でも簡単に購入できる価格のものであるが、切れ味は微妙な代物。

それでもバートがここまでやってこられたのは、スライムという相棒がいたからである。

ゴブリン数匹を相手にし、一人と一匹はうまく立ち回る。

この数匹くらいはバートにとっても簡単なものであった。

ここまで来るための最低限の武具にし、それ以外をすべて移動するために充ててしまったためである。

それでも、実力は初級から中級くらいにはなるほどである。

青銅の剣をふるい、ゴブリンをほふる。

「うーん、やっぱりモンスターの巣になっているのか」

ゴブリンの素材をいくつか集め、最後に短刀を拾っていく。

換金できそうなものはすべて持っていく。それがバートの冒険のスタイルだった。というか、そこまでしないとここまでの交通費などで危ないのだが。

そんなこんなで、最奥へとたどり着く。それほど、多くないモンスターとはいえ、バートもスライムもボロボロである。

「ここまで来ている人たちはいただろうし、ここをたくさん調べぬいたはずなんだよな」

そうつぶやくと、辺りを見渡す。

不穏な気配を感じ、武器を構えた。

部屋の入口からドッとゴブリンが数匹入ってきた。

どこかに隠れていたのだろう。最奥のこの部屋だと逃げ場がないっていうのをわかった上での行動に思える。

複数の旅人ならば、ゴブリンも手出ししないであろう。そんな雰囲気もしている。

「数の差か……」

複数の旅人なら、ゴブリン相手でも疲弊することはそうないだろうが、こちらは一人。

よほど効率よく敵を倒していっても疲弊は免れない。

右腕に痛みが走る。

矢が刺さっていた。鎧の隙間を縫うようにして……

ゴブリンのほくそ笑む表情がぼやけて見えた。

(まさか、毒?)

慌てて薬を取り出すが、体がしびれていう事をきかない。

膝から崩れるように倒れる。しかし、根性で武器を手放すことはない。

しかし、呼吸も浅くなってきたうえに、意識が朦朧としている。

(このままだと、死ぬ)

そう思っていても、声は出せない。

ビチャッと顔の近くに叩きつけられた音がする。

ぼやける視界で右腕を伸ばし、それに触れる。

(……スライム?)

遠くでゴブリンの笑い声が聞こえる。

それらをかき集めようとするが、力が入らない。

『――繋がった』

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