魔王到来
「もし、よろしければ私をパーティに加えてはいただけないだろうか?」
そう言って俺の元に現れたのは、パーティに入れて欲しいという女の人だった。年齢は、18?くらいか?俺と同じくらいだ。モデルのような体型でとんでもない美人。この人がパーティに入ってくれるのなら、これ以上のことはない。
「駄目?でしょうか?」
「いや、全然大丈夫だよ! 俺は蓮、よろしく!」
「カトミアルです。よろしくお願いします。」
カトミアルっていうのか、日本人ぽいけどやっぱり名前は異世界なのか?
「あ、俺はこれから武器屋に行ってからクエストに行く予定だけどどうする?」
「はい、お供いたします。」
「お供って、そんな殿様じゃないんだから普通でいいよ」
「あ。はい!」
というわけで俺達は武器屋に向かった。 今残っている金は5000ノイズ。ここでの物の価値を見ると1ノイズは1円と変わらないぐらいだろう。
まあ、これくらいあれば安い武器は買えるだろう。今まで素手でスライムを倒してたからな。
「たっけぇぇー!!」
一番安いのでも45000ノイズ、武器ってこんなに高いのか。
困り果てているところにカトミアルが俺の肩を叩き、ある物を指差す。
「武器ガチャ? 1番の当たりは100万ノイズ相当の[風雷:龍神丸]が当たります!?」
「でも、一番外れは普通のナイフみたいですね。」
「どっちにしろ武器は手に入るんだ、回すしかないだろ」
そうして俺はガチャを回すことにした。ガチャ一回でちょうど5000ノイズ。お金を入れて、ゆっくりと回していく。
カラ
「出てきた!さてと中身は?」
「嘘だろ」
「どうでしたか?蓮さん。」
「いっ、いっ、、一等賞…」
「ほ、本当ですか!?」
そこには、たしかに一等賞と書いていた。 最弱職のハンターだけどこうして最強の武器を手に入れる系だったのか、こうして俺の無双物語が幕を開ける。 俺は早速武器屋のおじさんと交換してもらった。
「お客さん相当運がいいな。この景品を一発で引き当てるとは。 さあ、これが一等の[風雷:龍神丸]だ!」
「おお!これが!でもなんか普通の刀っぽくないか?」
「そりゃそうだろうよ」
「え?どういうことだ?」
「その刀は持ち主と一緒に成長していくという変わった武器なんです。蓮さんはまだLV1なので刀も同等にLV1なんですよ。」
そんな…嘘だろ。これから俺の無双人生が待っていると思ったのに…
「だが、お客さんのLVが上がればその刀はもっと強くなるぜ」
「頑張ってLVを上げに行きましょう!」
「ああ…確かにそうだな!よし。頑張ってLVを上げるぞー!」
そうして俺達はクエストへとやってきた。そのクエストは畑の作物を食い荒らすワイルドボアを倒して欲しいという内容だった。
そうして俺達は、畑にやってきたのだが…
「あのイノシシみたいなのがワイルドボアか?」
「はい、少し大きいですが倒すのはそれほど難しくはありません。」
「なるほど、何か作戦はあるのか?」
「まず、蓮さんが前線で戦ってください。私は妖術で援護します。」
「分かった。 いやちょっと待て、今妖術って言ったか?!」
「はい、言いましたけど?」
なるほど日本っぽい町だから魔法じゃなくて妖術なのか。
「来ますよ!蓮さんお願いします!」
「え?!お願いしますとか言われても!」
そんなこと言われても、俺にできることは、
「とにかく全力で逃げ回ることだー!」
「戦ってはいませんが、足止めが出来るのならそれでも大丈夫です。」
「[炎刃]!」
カトミアルの短刀から炎の刃が飛んで行き、ワイルドボアを真っ二つに切り裂いた。
「す、すげぇ。あれが妖術…」
ワイルドボアが死んだことを確認したのか、畑の持ち主達がやってきた。
「本当に助かりました。なんとお礼を言って良いか」
「いえ、俺は何も。礼ならあそこにいるカトミアルに言ってやってください。」
こうして俺達は、無事クエストを終了し、町のいろんな人たちと仲良くなれた。武器屋のおじさんや、町の子供達。異世界転生も悪くないかもな。
そう思っていた。
俺達は、町の宿屋に泊まることにした。
飯を食いながらカトミアルと話していた。
「そういえばさ、カトミアルって名前なんか言いづらいな。」
「え?そうですか?」
[うん、もし良かったらさ、これからミアルって呼んでいい?」
「はい、蓮さんがそれでよければ構いませんよ。」
「じゃあ、改めてよろしく。ミアル。」
「はい、こちらこそ、よろしくお願いします。」
「じゃあ今日はもう寝るか」
「そうですね。おやすみなさい。」
「うん、おやすみ。」
そうして俺達は眠りについた。
その日の夜中、ミアルの声で目が覚めた。
何やらドア越しで叫んでいるように聞こえる。
「どうした何かあったのか?」
「蓮さん!無事だったんですね。実は町が魔王に襲われたんです!」
「なんだって?」
俺はすぐに装備を持って部屋を飛び出し、外に出た。
「何だ…これ…」
そこには、火の海が広がっていた。町の子供達や武器屋のおじさんも、みんな血を流して倒れていた。 そして、俺が上を向こうとしたその時、
見てしまった。
魔王の姿を。 1人笑いながら、燃え盛る町を見ている魔王を。
その瞬間、自分の心がなくなっていくのを感じた。何か、どす黒くて、醜いものが溢れてくる。
俺の意識はそこで途切れた。
目を覚ますと。全く知らない場所にいた。
横にミアルが立っている。
俺はいったいどうなったんだ?
最後まで見てくださってありがとうございます。
王道パターンを詰め込んだような作品ですが楽しんで見ていただけたら嬉しいです。