歴代の話~二代目のこと~
二代目はチャトラといった。焦げ茶色と薄茶の縞虎のオスで、家に来た時はまだ三ヶ月ぐらいの仔猫だった。もらったのか拾ったのか、由来は記憶にない。チマチマと歩き、かと思えばヤンチャに跳ね回る。遊び盛りなだけあり、ミィより活発でおもちゃが大好きだ。紐をくわえてきて遊んで、とおねだりもする。愛くるしい仔猫にたちまち家族一同は魅了された。
爪研ぎを盛んにするので爪を切る事になった。ちっちゃい爪だが鋭くて、遊ばせている途中でみんなが引っ掛かれたのである。
猫の爪は内側から層になっていて爪研ぎは古い外側の爪をはがして新しい鋭い爪に保つ効果がある。爪研ぎ場所を見ると三ヶ月形の爪のかけらが転がっていたりする。一番内側には赤い血管が透けて見えているので避けるように先だけを切ればしばらく大丈夫だ。
なのに父は一発で血を出させてギャッと飛んで逃げようとしたチャトラを更に押さえつけ続行しようと試みて、以降大いに嫌われた。仕方ないので他の家族みんなで爪切りに挑戦する事になったが手を取るだけでもいやがって逃げ出し、しまいには爪切り器を見るだけで警戒される様になった。
無理矢理抱き上げたりはせずにソファーで寝ている時を狙い、爪切り器もなるべく見せないように座面の陰に隠し、指をそっと押して出てきた爪を素早く切るのを繰り返す。チャトラが起きたらその場はもう終了だ。隙を見て前足の爪10本、時には後ろ足の特に鋭い爪も切れば任務完了となる。チャトラのお陰で私の爪切りスキルは大いに上がる事になった。この子以降猫の爪切りは私の担当である。
元気に暴れ回っていたチャトラが居なくなったのは1年経つか経たない頃だった。何処かへ冒険に出て戻れなくなったのか、事故にでもあったのか。何日も出掛けるのを繰り返しているうちにとうとう帰らなかった。成人ならぬ成猫したので独立して放浪オスになったというのが正しいのかも知れない。
ミィに続けてすぐ居なくなってしまったチャトラに私たちはしばらく落ち込んで、2年程は次の猫を飼う気にならなかった。
猫の爪の話。
猫にその気がなくても引っ掛かれる事は多く、飼っている間は大抵どこかに生傷が絶えない。
爪切りは大切なのである。