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女王様の巨大逆ハーレム

女王様の称号を進呈した理由。

 我が家の愛猫パトラは美猫である。美しい瞳、キレのある素早い動きを可能とする強靭なバネを秘めたしなやかな肢体。気品溢れる優雅な物腰と大きなオスにもまるで怯まない度胸と気迫。かと思えば飼い猫の基本、帰ってきた家族に「おかえりなさい」と出迎えたり、寂しくなれば「撫でて」と頭を擦り付けて甘えてきたりする。かわいい。兄と遊ぶ時の猫らしい茶目っ気やイタズラ心も見逃せない。電話口で私と会話までしてみせる頭の良さもある。

「あんな美人な猫は他に見たことない」と絶賛する私はもちろん家族一同がウチの女王様のファンである。身内びいきも甚だしいとの自覚はあるのだが、客観的な事実もまたある。


 パトラはオス達から絶大な支持を受けて巨大な逆ハーレムを形成し、ご近所一帯に君臨しているのだ。つまりモテる。それはもうモテまくっている。猫の恋は基本逆ハーレムなのだけど、それにしても毎度毎度モテ過ぎである。

 いつも少なくとも10匹、多い時には20匹以上のオス達に囲まれている。近所の何度も参加している猫もいるし、遠くから来たとおぼしき初めて見る猫もいる。この時期にはアレクももちろん取り巻きの1匹だ。普段庭に出入りしている猫の中にはメス猫だって何匹もいるはずなのに、我が家の女王様はそんな数のオスを独占しているのである。

 オス達の作る輪は中心程つまりパトラに近い程順位が高いらしいが、唯我独尊なパトラはオスの順位などお構い無しだ。どんなに立派な体格の強そうなオスでも気に入らなければ近寄る事すら許さない。彼女が怒るのでそういうオスはいつの間にかハーレムから消えている。ちなみにアレクの順位はあまり高くはなくて、いつも上の下という感じである。身近すぎて必死さが足りないのかもしれない。

 休憩やご飯の為に家に帰って来る時には、むしろ順位の低い、気に入った若くて綺麗なイケメンに戸口まで送らせるのだがそれが毎日違う猫だったりするのだから、相当な面食いだ。血が濃くならないように、メスは遠くから来たオスを選ぶ傾向が強いとは聞くものの、パトラの場合基準はあくまで「ただしイケメンに限る」なんだから、やれやれである。


 そんなこんなで恋の季節になると我が家の周辺は非常にうるさい。パトラの休憩の度にオス達が早く会いたいと呼び立てるし、食べ終わればパトラ自身もオス達を呼ぶし、10~20匹が大声で鳴き交わすのである。やかましいことこの上ない。

 我が家はパトラを飼っている以上仕方ない話だけど、今思うとご近所には随分迷惑をかけた物である。避妊手術が必要だったと思う。


 私達はパトラの仔が欲しかったのだが、しかしついぞ彼女が仔を産む事はなかった。さぞかわいい賢い仔だったろうに、本当にままならないものである。



 ◇



 猫が遺せる物はごくわずかだ。ましてや他所の猫なんて覚えている人は少ないだろう。少しでも多くの人にこんな猫もいたと知っていてほしくて、そして私が彼女達に与えてもらった幸福を記憶に留めるために、彼女達が遺した思い出話をこうして綴っている。

 みなさんがご近所の猫の声に悩まされた時は、そう言えばこんな話もあったなぁと思い出してもらえるとうれしい。


 みなさんはどんな猫に出会った事がありますか?

それでも彼女はモテ続ける。

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