女王様が甘えてきた時の話
我が家の女王様、パトラの瞳は美しい。くっきりとした黒のアイライン、キリリとしたきれいなアーモンド形の瞳、金の差し込む不可思議な緑の虹彩。中央に納まる縦長の瞳孔は深い深い濃緑だ。この美しい瞳が古代エジプトのアイラインが特徴的な化粧の壁画や彫刻を思わせて、名前の由来の一端となっている。
ふと顔を上げるとパトラがその美しい金緑の瞳で私をじっと見つめていた。つい先日知ったのだが、この金と緑の入り交じる不可思議な瞳の色をヘーゼルと言うらしい。ヘーゼル、すなわち榛の実の色、つまりどんぐりの色。どんぐりは熟すると緑から茶色に変わる。その移り変わる一時、どんぐりには二色が混在する、その色を指しているのだろうか?
神秘的な瞳を見つめ返して「どうしたの」と首を傾げれば、瞳を細めて「ぐるみゃあ」とひと鳴きして近寄って来た。観察しつつ、私の手が空くのを待っていたようだ。
手を伸ばせばグルグルと喉を鳴らしながら鼻先を寄せ、額から頬と擦りつける。そのまま耳をグリグリ撫でながら「おいで」と膝を叩けば乗って足ぶみをした。背中から腰と存分に撫でて、尻尾の付け根辺りをトントン叩けば尻尾がピンとたってフルフル震え、ご機嫌に喉の音が大きくなる。
そのままグルリと膝の上を回って居心地の良い場所を見つけると右を上に丸くなり、座り込んだ。頭を撫で、耳を指で挟んでこする。
外側の毛は短いのでビロードのよう、内側には太目の長い毛がまばらに生えているのでジョリジョリしていて、間には薄いながらもしっかりと厚みのあるピンク色の皮膚がある。感触を楽しみながら耳元から外側へと裏返しに折り返していたずらする。両方の耳を折って正面から覗き込んでみたパトラの顔がいつもと違ってまん丸なのが面白くて吹き出した。しばらくたつと折り返しが次第に上に上がっていって元に戻るのが楽しい。
ブルッとパトラが頭を振って抗議した。
ごめんごめんとまた頭を撫で付ける。右耳の後ろをカリカリ掻くと同じ右の後ろ足が持ち上がってピピピッと空を掻いた。
(あー、そこそこ。そこが痒いの)
「ん、ここ?」
と掻いてやるとまた足が半端に持ち上がって空を掻く。自分で掻いているつもりというか、つい動かしてしまうらしい。満足そうにピクピク動くヒゲがパトラを抱き寄せて支える方の手に当たってくすぐったい。
パトラが満足するまで耳の周囲を掻いてから、ヒゲを撫で付け、背中から尻尾まで手を滑らせる。猫が自分で届かない首の後ろとかを撫でると好まれる。
尻尾を手に取ると重力に従うようにスルリと手から逃げ出す。もう一度手に取ると、今度は嫌がるようにすぐにスルリと抜け出された。尻尾を触られるのは猫はあまり好きではないのだ。三度挑戦すると今度はピシッと手を弾かれた。残念。
(もう、何するのよ)
とピタピタ膝を尻尾で叩かれる。
「はいはい、ごめんってば」
背中から、今度はフカフカのおなかをワシャワシャとマッサージする。喉音が大きくなり、グッと肩を下方に入れて、おなかが大きく出た。おなかを存分にモフモフ撫でて喉をくすぐると、フリーになった両手がニギニギ動き始める。フミフミ、といって仔猫が母猫の乳を吸うときに乳を押す仕草だ。気を許し、甘えている証。肉球がギュッギュッと握られて見え隠れするのがかわいい。
あちこちモシャモシャ撫で回していると少し喉音が小さくなってきた。覗き込んでみると、パトラは安らかな寝息を立てている。
起きている時の凛とした気品溢れる仕草とこの甘えてくる時の可愛らしさ。このギャップが堪らない。
今日も愛猫の可愛さに私はメロメロなのである。
「猫の瞳の話」で切り捨てになった部分です。ついでに瞳、耳、ヒゲ、尻尾を全部盛り込んでみました。パトラの魅力をうまく書き出せましたでしょうか?




