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歴代の話~六代目な兄との別離~

タイトルでお分かりのように暗い話です。落ち込みたくない方は回避願います。

また、昨日は更新できず、申し訳ありませんでした。

代わりという訳ではありませんが、本日15時頃に活動報告、18時にもう一度小話の更新を予定しております。

 それは兄妹が来て六年を過ぎ、そろそろ七年になるかという頃だった。


 その日、兄猫アレクは未明から出掛けていて昼を過ぎても帰って来なかった。近所でまたネズミ取りの毒餌が撒かれたと聞いたので何となく不安だったけど、アレクは用心深いから大丈夫、と家族で言いあっていた。パトラは普通に出入りして過ごしている。

 夕方、やっとアレクが戻って来た。心なしか足取りがフラフラしている。ご飯と水を軽く取ると寝てしまった。長時間出掛けて疲れているのだろうと思っていると、突然起き上がってその場で食べた物を戻し始めた。餌のみならず、胃液まで吐いてなお吐こうとしている。吐き方が尋常じゃなく激しい。


 ――毒だ!!


 もう何匹も亡くしているからすぐにわかった。泣きそうになりながら、水を飲ませるともう一度吐いた。さいわいな事に血は混じっていないから助けられるかもしれない。私達ではこれ位しか出来ないのですぐに車に載せて獣医に運び込んだが、もう吐いたのならあとは体力勝負だと言われ、栄養剤を注射されただけだった。

 グッタリしているアレクを連れて帰り、特別に用意した寝床に寝かせれば、パトラが心配そうに覗き込んだ。額を舐めて励ましている。


 毛布や懐炉で寝床を温かく保ち、食べやすいように固形餌を磨り潰してふやかしたお粥を用意し、と環境を整えた。水を顔に寄せて皆で声をかけ励ませばヨロヨロと起き上がって水とお粥を口にする。終わるとドサリと横になった。


 ――アレク頑張って。毒なんかに負けないで!お願い、置いて行かないで。


 あまり騒いでも身体に障るので静かに私達はその場を後にする。パトラは寄り添ったままだった。




 毎日獣医に連れて行き、せめてもの栄養剤を射ってもらう。励ましてはなんとか水と食事をとらせる。なんとか回復する事を願って不安に包まれながら静かに見守る事1週間以上、アレクはなんとか生にしがみついてあがいていたが、快方に向かう事はなかった。後の頃は上体を起こす体力もなく、粥や水をスプーンで口に入れていたのだが、とうとう飲み込む力もなくなってしまった。



 浅くて荒い息が少しずつさらに細くなって行く。いよいよもう、最期が近い。見送るために皆が集まっていた。


「アレク、アレク」


 呼べば閉じていたまぶたが震え、やっとで瞳が私たちを見上げ、みゃぁ、と吐息が漏れた。


「ごめんね、おまえはこんなに頑張っているのに。助けてあげられなくてごめん」

「アレク今まで一緒にいてくれてありがとう。お陰で楽しかったよ」

「家を守ってくれてありがとう。よくやった。よく頑張ったな」

「パトラの事は任せて。私がちゃんと見ておくから」


 そっと頭を撫でそのぬくもりを惜しみながら、ぼろぼろ泣きながらも笑顔を浮かべ、それぞれに言葉を贈る。パトラがそんなアレクを覗きこんで、不安そうな顔をしている。

 うっすら開いている瞳が妹をとらえて、ペロ、とパトラの鼻先に震える舌が伸ばされて舐め上げた。パトラがアレクの額を舐め返すと、満足げにアレクが瞳を細めて笑った。そうして、深く長いため息が吐き出され、もう二度と息が吸われる事はなかったのである。

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