雨の日の過ごし方~女王様と兄~
梅雨入りして数日、今日は肌寒い。ソファーでテレビを見ている私の膝に我が家の愛猫が乗ってきた。温まりたいようだ。
緑色の瞳が美しい雉虎のメス、パトラ。エジプトのクレオパトラ女王から名をもらった、誇り高く勝ち気な最強美女だ。狩りが上手で喧嘩も強く、良くモテる。あくまで日本猫なのに洋名なのはもう一匹の3ヶ月程先にきたオス猫、白黒ハチワレのアレクサンダーに合わせて名付けたからだ。気品ある雰囲気からこの女王の名を選んだけど、名に恥じない美猫に育ち、中々良い名付けだったと日々自画自賛していたりする。子猫だったアレクとパトラの相性はとても良く、初日から兄妹のようにじゃれあって一緒に寝ていた。そんなアレクもパトラにはかなわない。イタズラしてはパトラに怒られている。まぁ兄貴分としてパトラが可愛くて仕方ないらしく色々負けてやっている面もあるのだが。
膝の上に上がったパトラはグルグル回ってベストポジションを見つけると丸くなって身体の手入れを始めた。まずは手、爪の間まで良く舐めて綺麗になったら、次は顔。目脂を取って耳の後ろまで綺麗にしたら今度は背中。右左と終わったらお腹。胸の方から始まってどんどん下の方へ。モフモフしながらテレビに前のめりになっていた私の顎を伸ばされたパトラの後ろ足が押しあげる。
―――おいおいパトラさんや、何もそんなに熱心にお手入れしなくても。
最強美女は美容にご執心だ。綺麗好きでいつも身体の隅々まできっちり掃除する。アレクの事も良く舐めてやっていて、そこだけ切り取るとまるで世話好き女房のようだ。アレクもお手入れはするし、お返しに舐めたりもしてるけど、パトラほど念入りではない。
後ろ足やしっぽの先まで手入れをし終わったパトラが再度グルグル回ってやっと寝る態勢に入った。そこへアレクがやって来たが、私の膝はパトラが占領しているのでソファーの隣の坐面に座るようだ。身体を私の足に擦り付けて挨拶してからソファーに上がって横になり、しっぽだけを私の膝に伸ばしてくる。こういうところが猫は可愛い。パトラの耳がアレクの動きを追っている。パトラを抱えたまま少し身体をずらして、アレクに手が届くようにした。片手にアレク、もう片手はパトラ。額や耳の後ろ、首を撫でる。そこそこ、もっと撫でて、とアレクが頭を押し付ける。お手入れも終わって私の膝で温まって、大好きなお兄ちゃんも側に来たパトラがくつろいでゴロゴロ喉を鳴らし始めた。グルンと身体をひねってお腹を出す。私もアレクも満足だ。雨の日はゆったり過ぎて行く。
◇
ダダダダダダダダッッ――‼
一眠りして元気に目を覚ました二匹による運動会が始まったようだ。猫たちが廊下や階段を駆け巡る。廊下の角や突き当たりでクイックターンを決め、攻守を入れ替えながら追い駆けっこが続く。雨で閉じ込められた元気盛り二匹のストレス解消だ。
―――あんまり床を傷付けないで欲しいんだけどなぁ。
二匹の足が床を蹴る度にカッカッと爪の音がしている。爪の先は切って丸くしてあるとはいえ、全力で叩き付けられた爪と木の板と、どちらの強度が勝るかとなれば、言わずもがな。へこみ傷が今日も増えて行く。これから梅雨が明けるまで毎日増えて行く。ワックスを掛けなければならない。憂鬱だ。
ダダダダダダダダッッ――、 ドタン‼
あ、転んだ。
猫たちとの色々なエピソードをこんな感じで綴って行きたいと思います。時系列は色々。女王様が主役。猫達の個性を伝えられると良いなぁ。
6/10
切り替え部分に◇を挿入。