えいえんのせかい
ONE〜輝く季節へ〜より
夕暮れ時を見ている。
雨の降る夕焼けだ。
とても哀しい風景なのに、どうして僕はこんな風景ばかりを見ているのだろう。
仕方がない。
仕方がないのだ。
これが僕のこころの中にある風景で
これが僕が望んでいた風景なのだから。
"きみはここがきらいなの?"
彼女が僕に話しかける。
永遠に変わらない彼女の姿。
あの日見た姿のままの彼女。
あの日?僕はいつ彼女を見たのだろう。
"きらいじゃないんだ。
だけどぼくはここにはいたくない。
それだけなんだ。"
そう僕は言った。
茜が待つあの空き地。
雨の降る空き地。
茜はいまもあそこで待っているだろう。
そこだけが僕が居たい場所だ。
暗転
此処は何処だろう。
辺りを見回すとそこはビルの上だった。
足下にある街の喧騒。
僕はそことは切り離されていた。
隣にいる彼女も下を眺めていた。
"わたしたちはあそこにはいけないんだね。"
"うん。ここからおちてもいけないんだ。
だって、ぼくがいるのはここではないんだからね。"
だって僕が遠い昔に望んだ場所は
全てから切り離されて
君だけと一緒に居られる。
そんな美しい世界だったのだから。
暗転
僕はそろそろ嫌気が差していた。
どこまで行っても変わらないこの風景に。
茜の隣。
僕はそこに帰ることだけを欲した。
"やっぱり、きみはここがきらいなんだね。"
"うん。ぼくはここにはいられないんだ。だからもうあのばしょにかえるよ。"
"そう。でもわたしはずっときみといっしょにいなくちゃ。"
彼女は寂しそうな顔をしてそういった。
そうだ。
彼女はすっと僕と居てくれるのだ。
永遠の盟約。
ずっと昔に交わしたその盟約は。
今も彼女を形作っていた。
"ありがとう。でももういいんだ。ぼくはひとりじゃなくなったからね。それにかえるばしょもあるんだ。"
"そう。ならもうとめないよ。"
そういった彼女の目は涙で鈍く輝いていた。
"さよなら。またあえるといいね。"
哀しくて美しい風景と彼女に背を向けて
僕は言った。
"うん。あえるよ。ぜったいね。"
彼女の声が後ろから聞こえる。
もう僕は振り返らない。
僕は帰るんだ。
茜や、みんなが待つ
あの美しく輝く季節へ。