池田家の過去
「バイバーイ!」
「うん!バイバイ!」
あー、目ぇ腫れてる。奏たち、めっちゃ気使ってくれたしなぁ〜。
帰りたくない。でもお腹空いたし。でも帰ったら志穂泣いてるだろうし、それにお母さんが顔を突っ込んで怒ってくるだろうから、めんどくさい。私だって泣きたいっつーの。
はぁ。もう家に着いちゃった。
とりあえず、自分の部屋に行こう。
深呼吸、深呼吸。
すぅー、はぁー。
よしっ!
「ただいまー。」
からのダッシュ!
「あ、紀穂!?待ちなさい!」
やーだね!どうせ怒られるだけだし。
ボフっ!!
あー。やっぱ私のベッドは硬いわ。
誰かさんのとは違って。
思えば、この部屋の物、ほとんど志穂と交換してる気がする。
このマットレスも2人で選んで買ってもらったとき、志穂が
「やっぱり紀穂のやつの方がよかった」
とか言って泣き叫んで、お母さんが志穂に譲れってうるさくて交換したんだっけ……。
「なによ……。」
お母さんもお母さんだよ。なんで志穂ばっかり。
ひいきされる理由ぐらい知っているのに、なんで、こんなに苦しいの?なんで、私は泣いてるの?
私の叔母、お母さんのお姉ちゃんから聞いた話なんだけどね。
お母さんが、私たち双子を産んだとき、私が先にでてきた。だけど、私がお母さんの体からでたときに、
お母さんが心肺停止状態になって、緊急帝王切開になった。まぁ、志穂が生まれる直前に元に戻ったらしいけど。でも、志穂はお母さんの体からでてきてすぐに泣かなかった。弱ってたんだ。
いまでも、お母さんはたまに病院に行っている。
親戚にも、
「志穂ちゃんはかわいいねぇ〜。」
とか言われてた。みんな私が憎いんだ。
理由①。私は、1度、お母さんを殺したんだ。
だから、親戚にも嫌われてる。
理由②。志穂が生まれてすぐの時、ものすごく弱ってたから、みんな同情してるんだ。私なんてどうでもいいって思っている。
3歳の時、私だけ里子にだすかで家族会議したらしいし。やっぱり、私は……。
「紀穂ー!話あるからおりてきなさーい!」
めんどくさ。話ってなに?
とりあえず行ってみよー。