苦しい嫉妬
「ヘぇ〜、せんせー、双子だったんだー!」
と、由紀が驚く。
「そうね。由紀ちゃん、真紀ちゃん、それに凛奈ちゃんと一緒。」
「ねぇねぇ、せんせ、もっと詳しく聞きたいです!」
「えー、ダメよ。もう練習時間でしょう。続きは明日にね。」
「「え〜!」」
「はぁー。」
池田はマンションで一人暮らしをしている。
ソファーに深く腰掛け、
「あ、そういえばこんなこともあったなー。」
と、またあの時の事を思い出す。
「あぁー……。」
あっついなー。もう夏か。いやまだ6月だけど。蒸し暑いこの微妙な時期が私は1番キライ。
もう中間テストも終わったし、しばらくはゆっくりフルート吹けるよー。
え、またすぐに期末テストあるの?まぁ、よゆーよゆー。ふっつーに簡単なんだもん。志穂と違って私はちゃんとできるコなんだから。あいつは赤点とかばっかり。遊んでばっかだから当然でしょ。
しかもトランペットもあんまり。経験者の舞花ちゃんのほーが当然うまいし、正直パートの足引っ張ってるんじゃないかな。こないだ2年の先輩が陰口言ってたらしいし。え、私?私は千郷先輩のおかげで
もうバリバリ吹けるよ。こないだ先生にも褒められたし。奏とも仲良しこよしでやってるよ。智花とエリとも。こないだ智花んちで遊んだんだ。うちのなんっ倍も広かった。あ、うちがビンボーなわけじゃないからね。
「ふんっぅう〜あぁ!」
あーあ。なんつー女子力のない背伸び。
なんかいろいろ考えてたらもう屋上着いちゃったよ。
〈♪〜♪〜〉
あー。だいぶ上達してきたなぁー。これも千郷先輩のおかげだよ!
〈♪〜♪〜…〉
「ねぇ、なんでそんなにできるの?」
は、誰?
「なんで、紀穂はそこまで吹けるの?」
なに、志穂。基礎練の邪魔しないでよ。
「どーゆーこと?」
「だってだって、志穂と同じ時期に始めたのに、なんでそんなに差があるの?志穂だって頑張ってるのに。」
「そんなの、楽器が違うんだから知らないよ。」
「なんで?なんでなんで?だってさ、小学校の時は志穂の方がなんでもできたよ。お料理だって、お絵描きだって。勉強以外は紀穂よりなんでもできたのに、なんでなの?なんで志穂よりも紀穂の方が友達多いの?志穂は、紀穂に負けたの?ねぇ、」
「ぅるっさいなぁ!」
志穂が唖然とした。当たり前だよ。私のこと、そんな風に思ってたんだ。なんなの?なにがしたいの?
私は勝ち組って言いたいの?
なんであんたが泣いてるの?そんな自己中な考えで。私だって泣きたいよ。
「なんなの?ずっとそんな風に思ってたの!?私が邪魔なら吹部に入らなかったらよかったじゃんよ!」
「あ、ご、ごめんなさ……志穂、そんなつもりじゃ……」
「近寄らないでよ!どっか行って!はやく!」
なにをおどおどしているの?いまさら謝ったって遅いよ!
「……っ!」
志穂は走って降りてった。
……っ、あれ、なんで涙が……。




