真実
私たちが丁度帰ってきた頃、雨が降り始めた。
「はい」
まだこの時期は少し冷えるのか、長袖が着たかった。
お母さんは、私の前にココアをおいた。
そして、ニコッと笑った。
え、なに!? なんで笑う!? きもっちわ……それは言い過ぎか。
「まずなにから話したらいいのかしら」
「私は、なにも話すことはない。1週間前に全部話したはず」
もーやだ。何この空間。
「まぁ、まず紀穂が言っていたこと。いい?紀穂」
と、お母さんは私の目をまっすぐ見た。
「なによ?」
私は目線をそらす。
「2人が生まれたとき、心肺停止になったのは、志穂が出てきたあとなのよ」
ザ────────────
雨の音が響く。
「え? いまなんて? 聞こえなかった」
「あなたは、私を殺していないの」
う、そ。
だって、叔母さんが言ってたもの。
「姉さん、あなたの叔母さんは、いや、私たちの親戚全員が間違っているのよ」
「は?」
「お母さん、きちんと調べたのよ」
うそだよ。そんなの、
「じゃあなんで里子に出すって話になったの?」
「それは……、あなたが池田家にいるのが辛いと思っていたからなの」
……あ、そういえば、
私、叔母さんにそのこと聞いてから、しばらくずっと部屋で1人泣いてたような。
「あなたがこの家にいることが嫌なら、私が縛っているなんてかわいそうと思ったのよ」
「それは、」
「うん?」
私は言い返そうとしたけど、やっぱりやめた。
でも、それは叔母さんの話を聞いて親戚から冷たい目で見られるのにヘラヘラと生きていけるわけないと思ったからで、
「あなたは親戚の目なんて気にしなくていいの」
「なんで、そこまでわかるの」
声は少し震えていた。
「なんでって、そんなの決まってるじゃない。私は、紀穂の母親なんだから」
"母親なんだから"
なによそれ。
ずっと、そんな言葉聞いたことなかった。
勝手にこっちから避けて皆が冷たい目で見てくるとか被害妄想してたんだ。
志穂の言う通りだったなんて。
なんか目から出てきた。
「……っう、ごめんなさ……い」
気付いたら、こんな言葉が出ていた。
お母さんは、私の頭にそっと手を乗せ、
私はお母さんを抱きしめた。




