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 ランチをつくろう

【作者よりのお知らせ】

 多忙につき更新が遅れております。

 徐々にペースを戻しますのでおまちくださいね!


 新章、はじめます♪



 午前の日差しは明るく心地よい。


 僅かに開いたキッチンの窓からは、程よい肌触りのそよ風が感じられる。

 

 窓から望む王城裏公園の木々は、彩りに変化が生じはじめていた。気の早い広葉樹は色づき始め、緑の勢いは若干衰え始めているようだ。


「早いもんだなぁ、もう秋か」

微笑(そうね)。歳を取っちゃうわ」


 マニュフェルノがハーブの特製ブレンド茶を口に運ぶ。

 俺も一口茶をすすると、ミントとアップル、甘い花のような複雑な香りもする。


 優雅な午後のひととき。キッチンの小さなテーブルでマニュフェルノと二人でお茶を飲む。足元には、小麦の粉を掃除する館スライムが数匹モゾモゾと動いている。


 庭先を眺めると、マニュフェルノやリオラが植えた植物のエリアが徐々に勢力を拡大している。

 花壇はいつの間にかハーブと野菜の畑に変わり、日常的に使うパセリやバジルなどに置き換えられているようだ。

 キッチンの中には収穫したハーブが吊り下げられて陰干しの最中だ。あとでお茶や料理、石鹸の香り付けに使うのだという。


 窓から見える三日月池には小さなボートが浮かんでいた。目を凝らすと隣家(・・)の姉妹と、漕ぎ手はチュウタらしい。

 金髪の姉が何やら指図をし、赤毛の少年チュウタが必死に漕いでいる。

 相変わらずだが楽しそうで何よりだ。


「気温も天気もちょうどいいし、出かけてみるか」

「賛成。でも遠くにいくのも面倒ね」

「うむ、確かに」


 似た者同士。あまり遠くにいくのもめんどくさい。


「お弁当をつくってピクニック……とか?」

「公園。そのへんでランチでもいいわ」

「出かけるというか庭先じゃないか」

「十分。それでも楽しいわ」


 丸いメガネの向こうで優しい瞳が細まる。ゆるく編んだ銀髪の毛先を指で整えると、マニュフェルノは立ち上がった。


 残り物のパンとハム、チーズで簡単なサンドイッチでも作って、公園でランチと洒落込もう。


 うむ、実に優雅な休日じゃないか。

 その静けさを破るように、ウチの姉妹たちの賑やかな声がリビングダイニングにやってきた。やがてキッチンに居る俺とマニュフェルノにも気がつく。


「あ、ぐーぐ、お出かけするのデース?」


 賑やかな声の先陣を切ってラーナが飛び込んできた。


「天気が良いから公園に散歩さ。ラーナもいこうぜ?」

「ミーも行くのデース」


 足元の館スライムたちがピッとその声に反応する。指令を出しているわけではないが、ラーナをスライム族の親分と思っているのだろう。


「あのボート、チュウタ達ですねー」

「ワシらも船出して、向こうの屋敷まで追いかけるかにょ」

領海(りょーかい)しんぱんですからねー」

「チュウタはコキ使われておるようで、愉快じゃにょ」


 プラムとヘムペローザが窓からボートを眺めて、きゃっきゃと笑っている。だが、マニュフェルノがサンドイッチを作っているのを見て、昼が近い事を悟ったらしい。

 

「お昼ごはんお手伝いしますー。みんなでつくりますよ」

「感謝。そうね、手伝って」

「そうだにょ。適当なアレを挟んで賢者にょに食べてもらうにょ」

 プラムとヘムペローザは手を洗い、手伝うつもりらしい。


「適当なアレってなんだよ……」

「にょほほ、お楽しみにょ」

 ヘムペローザの闇鍋サンドイッチ。一体何を挟むつもりなんだ。


「プラムもサンドイッチは得意ですよー」

 ポニーテールに髪を結ったプラムが白いシャツの袖をまくる。

 キョロキョロとあたりを見回して、床の館スライムをじーっと見つめる。


「プラムそれは食べ物じゃない」

「冗談ですよー。ぐぐれさまはもー」

「一瞬本気だったよな?」

「えへへ」

 差し入れのサンドイッチを煮込んでいた時もあったのに……。あれから成長したのか、していないのか。


 俺は人口密度の上がったキッチンから、リビングダイニングへと、お茶カップを手に移動することにした。


<つづく>


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