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賢者ググレカスの優雅な日常 ~素敵な『賢者の館』ライフはじめました!~  作者: たまり
◆30章 ググレカスの一人ギルド繁盛記 編
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 決着、次世代交通技術研究成果発表会

 俺とレントミア、ヘムペローザと妖精メティウスは発表を終え、自分たちの席に戻り結果発表を待っていた。


 その間、となりに座る四角いメガネのポレリッサが椅子を近づけて絡んできた。


「なんですかあの発表。おたくの国の最上位魔法使いの共演? まるで魔法の『力押し』じゃぁないですか? 六英雄のうち二人の魔法使いに加えて、世界的にも稀有な植物練成魔法を使える、そちらの弟子さん? そんなの、勝てっこないですよ」


 ぱっと大げさに両手を天に向けて首を振る。


「いや、お前のゴーレム造りの凄さには敵わんと、発表でも言っただろう? 俺達のはチームでやっとこさ、レールを発表しただけなんだよ」


「そうですけどねぇ。ウチは原材料費も人件費も、けっこうかかるんですよ? それに比べて、自家栽培できる魔法の木………ですからねぇ」


「はは、それを言われるとね」


 非常にうざったいが、歯に衣着せぬ言い方は、友人ならではか。


「ググレカス君のは儲かりますよー、やり方次第ですけどね」

「商売上手のポレリッサ君え教えを乞いたいよ。羽振りも良さそうだしな」

「いえいえ。ウチはこう見えてもお小遣い制でしてねぇ」

「おや、そうなのか」


 美人の奥さんも派手に見えて、実はかなりのしっかり者のようだ。ちなみに賢者の館では、俺の収入は全てマニュフェルノに渡している。でも普段使うお金に関しては、王立銀行で適当に必要な分を引き下ろして使っている。はて……お小遣い制ではないな?


『はい! では、おまたせいたしました! チーム・ググレカスの点数を発表します』


 採点結果が出たようだ。あれやこれやと熱い議論を交わし始めていた会場の聴衆が、壇上の『幻灯投影魔法具(マギナプロジェクタ)』に注目する。


 (運搬支援魔法素材『木道レールの苗』&『育成魔導書』)


 ――最高速度:2(自作『魔導車』での判定)

 ――走行距離:4(同上)

 ――運搬質量:3(同上)

 ――安全運行:1(脱輪や衝突など回避策が未提示)

 ――運用費用:4(発表内容遠通りならば、低コストである)


 ――評価合計:15


「ありゃ、そこそこだな」

「下町の魔法工房組合と同じ点数。真面目に商売している人たちと勝負が出来ただけでも、いいんじゃない?」

「うーむ」

 レントミアが机に肩肘を付いたまま、手をひらりとさせた。たしかにちょっとガッカリだが、手作りの魔導車で判断されるのは仕方ないだろう。

 それに安全面の指摘はもっともだ。


 結果トップは17点を叩き出した貸馬組合の『白王号の子ども達』と、ポレリッサの運搬用ゴーレム『タイプ・ピギーホッパー』だ。

 次点は、15点の下町の魔法工房(マーセナル)組合(ギルド)の『ハイブリッド馬車、拡張キット』。そして俺達の『木道レールの苗』&『育成魔導書』ということになる。


「何だか残念だにょー」

「お気を落とさずにヘムペローザ様! 魔法の素晴らしさは皆様にお伝えできましたわ」

「そうなんだかにょー。賢者にょはヘコんでないかにょ?」


 顔を傾けて、俺の方を覗き込むヘムペローザ。黒髪がテーブルの上にさらりと落ちる。


「心配してくれるのかヘムペロ。俺は平気さ。それより、お前には魔法で沢山がんばってもらったのに、すまない。もう少し上手い手を考えればよかった……」


「にょほ? レン兄ぃと賢者にょと、一緒に魔法の勉強ができて、楽しかったからいいにょー」


 今さらだが、ヘムペローザは可愛い弟子だ。帰りに美味しいお菓子でも買ってやろう。


 と、最後にスヌーヴェル姫殿下による総評が行われた。

 それぞれのチームの良い点を褒めつつ、問題点もきちんと指摘したのが印象的だ。

 

「――魔法使いという職業に、最近変化が見られます。戦乱が収まり平和になったことで、攻撃魔法だけを学んできた魔法使たちが、転職を余儀なくする……というような変化です。しかしそれは、魔法道具、普通の人でも使えるという革新的な魔法工学の発展へとつながりました――」


 チーム・ググレカスに関してもそれは同じだった。


「力を合わせて、一つの新しい可能性を示したことは評価いたします。しかしながら、愛らしいお弟子さんの魔法無くしては、この発明は成り立ちません。また、賢者ググレカスと大魔法使いレントミアの力が無ければ、この形には成り得なかったでしょう。つまりチームとしては非常に素晴らしいのですが、魔法の産業にするにはいささか問題もあるように思います。それでも、大変素晴らしいものでした。今後の更なる研鑽に努めて下さるよう」


 拍手を浴びながら俺たちは深々と頭を下げた。

 と、王国軍のギルケス将軍閣下が、発言する。


「あー、わが軍で、イスラヴィアから空輸される金属棒を、運搬する手段を探しておる。王都から30キロメルテ西方の砂漠の玄関口付近から、馬車ではない手段で、効率よく運搬したいのじゃ。賢者ググレカスチームの発表を、応用し何か出来ぬか考えてみたいのじゃ。資金、人材、実際の建設についての心配はいらぬぞ? なんせ軍は今、暇……コホンじゃ」


「評価いただきありがとうございます。ですが、まずは仲間たちと、私の所属する上に確認します」


「賢者ググレカス殿もお堅くなったのぅ」

 将軍閣下がガハハと笑う。


 こうして、発表会は幕を閉じた。


 ◇


<つづく>


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