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かしかり  作者: 湯城木肌
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少女-4,自己紹介


 扉が開いた。

 聞いていた親友の彼氏の友達かな、と視線を扉の方に向ける。


「部屋、間違えてないよな、うん」


 入ってきた男性は目を見開いて呟いた。

 あれ、彼が何故ここにいるんだろう。

 わたしを追いかけてきた、いやそんなわけはない。もしかしてお金を取り返しに来たのかも。それなら追いかける意味はある。お金は遊ぶために借りたのか、それならすぐに金返せ、といったところだろう。

 返します、返します、今すぐ返します。

 ごめんなさいごめんなさいと心の中で繰り返し唱えながら財布に手をやる。


「まーとりあえず座れよ」

 親友の彼氏が機械で選曲しながら適当な調子で言う。

 そうだな、と彼はソファに座った。

 部屋はわたしの前の壁にテレビが設置されており、わたしとの間に低い机が置かれている。その机を囲むように逆L字型のソファに配置されていて、左側に短い部分が来ている。右の壁には部屋の出入り口だ。

 座っている位置は、左から彼氏さん、親友、わたしの順番。親友は部屋の角で脚を組んでいる。

 だから何が言いたいのかというと、彼は自然にわたしの隣に座ったということだ。

 どうしよう。何がかはわからないけど、どうしよう。


「よっすー、お邪魔してまーす」

 軽い調子で親友が敬礼する。

「さっきお前のクラスの奴らと会ったけど」

「そうそう。クラス会の二次会でカラオケに来たはいいんだけど、部屋空いてなくてね」

「幹事のせいでな」

「で、あんたらがここに来てたからちょっとご一緒しませんか? ってコイツがいうもんだから」

「あー、なるほどな」


 わたしを挟んでの会話。ちょっと体をそらして邪魔にならないようにしていた。気まずいのか羨ましいのか変な気分だった。

 彼が隣にいる事実は意識しないように意識する。そうしないとこの距離は心が持たない。


「で、えっと」

 彼の言葉が詰まる。少しだけ顔を右に向けると彼がわたしを見ているように見えた。うわ、近い。

「あー、この子? あんた知らなかったっけ? フレンドオブマイン」

 親友が親指でわたしを指して紹介してくれる。続けて彼氏さんが握り合った両手を胸にあてて親友に寄り添った。

「覚えた英語をこんなに自然に使えるなんて! ホントカワイイ!」

「ちょと黙っててくれる」

「黙れ阿呆」

 流れるような連携を目の前にして、仲いいなあと思った。三人は小学校からの付き合いらしかった。わたしもこの輪の中に入りたいなあと羨ましく思う。


「ほら、あんた自己紹介しなさいな」

 親友がわたしの背中を小突く。見えないけれど、多分彼女はこの状況を面白がって笑っているのだろう。

 よし、と思って自己紹介をする。彼は覚えていないだろうけど、実は二回目の。


「か、苅谷美奈、です。よろしく」


 うわあああ、何で自分の名前でも噛むんだろう。


「俺は相沢卓志。卓球の卓に、志でタカシ。よろしくな」


 これで正式にわたしは彼の中の世界に入った。自己紹介しただけなのに、心臓の音が耳元で聞こえる。聞こえて、ないよね。


「くそう、みんなして俺をいじめて。今日はロッキーでいってやる!」

 テレビ画面を見ると、英語の文字が映っており、ノリのいい曲が流れ始めた。


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