少年-4.カラオケ
カラオケボックスのあるビルにたどり着いた。カラオケはこのビルの三階にある。
ビル下の駐輪場に自転車をとめ、鍵をかける。悪友はすでに駐輪場から出て俺を手招きしていた。
エレベーターが設置されているけれど待つことが面倒なので階段で向かう。上から声が多数の声が聞こえ、気になりながら上っていくと隣のクラス集団に出くわした。
その中にいた知り合いに声をかける。
「今終わった感じか?」
「いや、違うんだけど」
俺に気づいて声を返してくれる。説明しようとしたのか立ち止まった。だが階段途中であり、集団で移動中だったので、邪魔者扱いされた彼は周りに押されて俺の後ろに来た。体を後ろに向ける。
「今日クラス会でさ、飯食った後カラオケ行こうかって話になって、ここに着たんだけどさ」
恥ずかしそうに頭を掻いた。
「この人数だろ? 二部屋はとりたいけど今一部屋しか空いてないらしくてさ」
「マジか」
空室がないから帰るという選択肢は消えてしまった。
「何でお前ら先に予約とかとっておかないの。まとめ役とか幹事とかいなかったのか?」
訊ねると、あははと笑って目を逸らされる。
「この阿呆」ため息をつき、体を前に戻す。「じゃあな」
「おう」
既に前には悪友はいなかった。俺に待てず先に行ったのだろう。待たせすぎるのも悪いので気持ち急いで階段を上った。
三階に着いて扉を開ける。辺りを見回すが、悪友は見当たらなかった。
「あ、ケータイ?」
ポケットから来る振動に気づき、携帯電話を取り出す。
「十三号室ね、ハイハイ」
確認してポケットにしまう。十三号室に向かいながら財布を取り出して、中身を確認する。
「そうだ、あれから金入れてなかった」
一万はさすがに痛かったかな、と今更考える。ちゃんと返してもらえるよなと不安にかられる。
彼女の顔は分かるが、名前は知らない。あれ、これは意外と危ない状態なんじゃないだろうか。
「まあアイツから聞いた話が本当だったら、仕方ない気はしたからなあ」
そうやって自分に言い聞かせた。
十三号室を見つけ、財布をしまう。
「ま、今はカラオケ楽しもうか」
金が足りなかったらアイツに奢ってもらおう。いつも驕っているから今日ぐらいいはずだ。
そんなことを考えながら、扉を開けた。