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かしかり  作者: 湯城木肌
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少年-3.遊びの誘い

 毎週土曜日はバイトだ。そしてバイト先から最新映画をレンタルして、バイト後家で優雅に過ごすというのが俺のゴールデンタイム。

 土日は部活が休みだ。放送部は兼部が多いので自然とそうなってしまったらしい。俺は兼部をしてないがバイトと映画鑑賞という外せない予定があるのでありがたかった。

 そう、バイトが終わればゴールデンタイムが待っているのだ。


 店内の古時計が午後三時を指し、ワイルドな店長から「もうあがっていいぞ」の言葉を受けた。それに軽く返事をし、着替える。バイト時間中に借りた映画三本が入った鞄を取り、「お疲れ様でしたー」と軽く挨拶して、店内を横切る。

 小さな店なので客は少ないし、いたとしても馴染みの客しかいない。だからバイト時間中に映画のレンタルが出来るのだ。こんなゆるさでやっていけるのかと思う時はあるが、経営は俺の考えるところじゃない。

「ま、それはともかく」

 借りた映画、どれから観ようかなとワクワクしながら扉を押して、店を出た。


「あで!」

 目の前に額をさする悪友がいた。

「おう、相棒!」

「俺はこれから」

「ヒトカラ行こうぜ!」

 抵抗の言葉はかき消され、満面の笑みに迎え撃たれる。

「せめて誘うならカラオケ行こうぜ、にしろよ」

 悪友の体を押し、扉から離れる。ここでずっと話し続けても邪魔になることはないだろうけど、念のためだ。


「お前があんま歌わないからほぼヒトカラかなって」

「じゃあマイク置け。連続で曲入れんな」

 店前に駐車していた自転車へと向かう。悪友の自転車が隣に並んでいた。

「で、今日は何時間するんだ?」

 ポケットの中から財布を取り出す。そして財布のなかにある自転車の鍵を取り出した。

「フリータイム」

「黙れ阿呆」

 鍵を差し込み、捻る。ハンドルを掴み、スタンドを蹴る。


「じゃあ五時間」

「二時間」

「三時間!」

「五分」

「そんな短い時間ないって!」

 自転車に跨り、よく行くカラオケボックスへ向かって足を動かす。

 部屋が全部使用されていたら、それを言い訳に帰ろうか。

「休日なんだから遊んでいてくれよ学生諸君」


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