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かしかり  作者: 湯城木肌
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少女-17.尾行

 太陽が届かないというだけで多少心細くなる。折り畳み傘は鞄の中に用意しているが、それでも雨が降りそうな雰囲気を感じるだけで何かよくわからないものに怯えてしまう。

 多分今のわたしのしている行動のせいもあるだろう。あまり褒められるものだはないからだ。

「大丈夫だよ、ね?」

 親友が電話で持ちかけた相談の内容を思い返す。


 彼氏が浮気しているかもしれないという話だった。先週後輩から告白があり断ったらしいのだが、それから彼氏の様子がそわそわして落ち着かない。問い詰めても話を逸らされるだけで相手にしてもらえない。どうしようか、と悩んでわたしに相談したのだという。

 いつも頼ってばかりの人に頼られるというのは心地がいい。素直に相談に乗った。

 だが彼女はわたしに解決策を求めているわけではないようで、代わりに一つの頼みごとをされた。

 日曜日、つまり今日親戚の家に行かなければいけないのでこの街にはいないのだそうだ。その機に乗じて彼氏が浮気するかもしれない。だからわたしに見張りをして欲しいのだという。

 快く引き受け、現在は尾行の真っ最中だ。今日わたしの部活は午前中にあったが休んだ。サッカー部が休みなので彼女に教えてもらった彼の家で張る必要があったのだ。こんな状況に良く似合うアンパンと牛乳は忘れず準備している。


 そろそろ昼食をとろうかと思ったところで彼が家から出た。自転車ではなく徒歩だったので本当に助かった。自転車で出かける可能性を考えたのは彼の家の前にたどり着いたときだったのだ。

 いくらか歩いて待ち合わせ場所としてよく使われる鯉の池前で立ち止まった。誰かを待っているようだったので、建物の陰から観察していると相沢くんが現れた。二人が付き合っている等の妄想で頭がパンクしそうになったがとりあえず尾行を続けた。

 これからどうなるんだろうと眺めていると彼氏さんだけが離れて先へ行った。この先には確か映画館があったはずだ。追いかけようにも相沢くんが間にいるためそれが出来ない。


「あれ? 別に相沢くんにはバレても、あれ、どうなんだろう」

 彼氏さんが浮気をしていて、相沢くんがその件に関わっているならバレるわけにはいかない。しかし関わっていないなら協力してもらえるかもしれない。

「んー、まあ、見つからないほうがいいかも。念のために」

 勝手に頷いて早めに結論づける。さあ尾行再開だ。


「ってアレ。彼氏さんいない? 相沢くんも!」

 見失った、と慌てるが大体の予想はつく。映画館で間違いないはずだ。そうでなかったら為すすべがない。街中を駆け回って捜す羽目になってしまう。

 最初は早歩き、だが焦ってすぐにダッシュへ切り替える。遠くなかったのであっさりと映画館についた。

 荒く息をしながら並んでいる広告ポスターをざっと見る。どれを観にいったのだろうか。もし目的地が映画館であればだけれど。


「苅谷さん? どうしたのそんな急いで」

「へやっ」

 チケットカウンターの前で顔をこちらに向けている彼がいた。

 何をすれば分からず出力出来た行動が愛想笑いだけだった。


 休日に街中で息を荒くした姿を好きな人に見られた場合の対処法を誰か教えてください。

 脳内の小さなわたしは体全てをつかって神様に祈った。

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