少年-2.悪友
放課後になっても解放感は無かった。放課後は部活かバイトの二択が基本で、どちらもないときでも昨日のように課題で潰れてしまうことが大半だからだ。
今日はバイトがあるためそれなりに急いで帰り支度をしていると、悪友が俺の席へ歩いてきた。
悪友が笑顔で俺のもとにやってくるときはいつも以上に面倒な絡まれ方をする。だから何を言われてもいつものように同じ言葉を叩きつける。
「なあ明日一緒にヒトカラいこーぜ!」
「黙れ阿呆」
帰り支度も終わり、椅子から立ち上がる。
「おいおいそれは無いぜ親友」
「黙れ阿呆。お前は数も数えられなくなったのかよ」しがみついてくる悪友をひきずりながら教室の入り口へ向かう。「お前の大好きな二進数では二を一って言うのか」
「何言ってんだ。一〇で二だし、俺の大好きなのは二進数じゃなく二次元だし!」
「そーか、じゃあそのまま二次元まで行ってこいそして帰ってくんな」
「ああなんて冷たい男!」
叫んだ悪友は俺の制服から手を離した。一緒に体の力も抜いたのか、勢いよく床に倒れこんだ。頭だけ振り返って見てみると女座りでこちらを見つめていた。
「この人はこんなか弱い私を置いていくのね」ポケットからハンカチを取り出し、優しく口にはさんだ。「こんな可哀相な私を見ても何も思わないの、この冷血漢」
「何も思わないってことはないよ」
「え、それって」
「気持ち悪いと思ってる」
軽く言い捨てて教室から出る。
うわあああああん、とオカマの気持ち悪い声が聞こえたが、気にせず階段を降りていった。