少女-14.妄想
緊張したけれど演奏は乱れることなく無事成功した。
彼はわたしを見てくれただろうか。
無事自分のやるべきことを終え、楽器を片付けた。体育館に戻るころにはオープニングは終わっていた。
その後は親友と一緒に演劇や展示を観て過ごした。わたしのクラスの展示は七クラス中三番目、いや四番目くらいの順位だろうか。皆で頑張ったから一番でもおかしくないけれど。
昼食の時間は決まっておらず、各自で取ることになっている。一時からわたしたちが展示の案内当番なので、それまでに済ませておくことにした。
わたしたちの教室の真下の部屋で弁当箱を広げる。その教室ではすでに他の生徒や保護者が昼食をとっていた。時計は十二時を指したばかりなので時間に余裕はある。
「お、お二人さん食事? 俺もいーれーて」
親友の彼氏が彼女の隣に座る。いつの間に近づいてきたんだろう。
「一人寂しくどうしたのよ。アイツは?」
「そんな。俺いつも卓志と一緒なわけじゃねーよ?」
「いっつも一緒でしょ、アンタらは」
「あ、妬いちゃった? ごめん。でも安心して。俺はキミ一筋だから」
「ハイハイ」
恥ずかしげもなく愛の言葉を放てる彼に感心してしまう。だけど感心しているだけでは駄目だ。わたしももうすぐ愛の告白をするんだから。
実行するなら演奏をした今日がいいだろうか。それとも文化祭が終わる明日か。
わたしが考えている間も二人の掛け合いは続いていた。わたしはお邪魔かな。
「つーかさ、アイツ文化祭中は暇ないんだと。オープニングの後言われた」
「えっ」
「何それ。どういうこと」
彼はわたしを一瞥してから話を続けた。
「放送部の仕事があるらしくてさ、文化祭中は放送室のこもりっきりらしいんだよ。ああ、想い会う二人にはいつも大きな障害が立ちはだかるのね!」
「お前らもう結婚しろボケ」
どうしよう。彼には文化祭中は会えないんだ。一緒に展示や演劇を観て回るなんて奇跡はありえないと思っていたけれど、会えないかもしれないという発想はなかった。
しかし、諦めない。文化祭中は駄目でも、終わった後なら大丈夫なはずだ。臆病なわたしがここまで気合をいれたのは初めてのことだ。ここでやらなきゃいつやるんだ、わたしは。
「あ、そうそう、ついでに卓志の話で面白いのがあるんだけど」
「何よ」
「アイツ恋したことあるんだってよ。マジ笑えた」
「うっそ。ホントに?」
彼女は彼を見てから、わたしに顔を向ける。大丈夫、わたし知ってるから。
「小学校の頃に知り合った子らしくてさ、苅谷さんみたいな雰囲気で髪の短い子だって」
「へえー」
彼女がわたしを見てにやつく。真横にいたなら肘で突きそうだ。
わたしは何の言葉も発さなかった。発せなかった。
自然と手が動き、その手は髪の毛を触っていた。
中学校までわたしの髪は、長かった。




