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かしかり  作者: 湯城木肌
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少年-14.文化祭当日

 時間がない時間がないと喚きながらもどうにかクラス展示は間に合った。完成したのが当日の朝で、本当にギリギリだった。

 全体像を眺めると、未来都市だから何でもありという発想のためにカオスとしか言いようのない出来だった。皆自分の趣味に走り、まとまりがないのだ。これは諦めるしかない。

 放送部で作った動画は、自分で脚本を作ったからかもしれないが、良い出来だった。視聴覚室を借り、そこで動画を流すことになっている。十五分程の長さで、今日明日の二日間何回も繰り返すそうだ。


「盛り上がってるなー」

 扉の隙間からオープニングで騒いでいる生徒達が見える。今は管弦楽部を演奏していた。

 俺は体育館の倉庫にいるためステージ上のパフォーマンスを真正面から見ることは出来ない。体育館の倉庫はステージの横にあり、放送部としての活動のためここにいる。ステージで魅せる人たちが使うマイク等を回収することが目的だ。

 文化祭で活動するのは基本二年生だけだ。三年生は最後の、一年生は初めての文化祭だから当然とも言える。そのはずなのだが。

「ところで何故部長がここにいるんですか」

「うん? 変か?」

 腕を組んで部長は堂々と答える。

「変っていうか、三年生は今年最後なのにオープニングは見なくていいのかなと思ったんですが」

「何を言っているんだ。横からだけど見えるだろう? しっかり楽しんでいるよ。ここで聞くのもいいものだぞ」

「そうですか」


 目の前で観ることで迫力を感じて、周囲の盛り上がりがあってより楽しめると思う。この場所では盛り上がろうにも盛り上がりにくい。興奮して盛り上がる部長は想像できないが。

「それに文化祭で裏方出来るのも今回で最後だからな。それを味わっておきたいというのもある」

「はあ」

 部長が何を考えているのか理解できない。どういう思考をしているのだろうか。

「ただ、クロージングで流す思い出映像の編集は手伝わない。正直、アレは二度とやりたくない」

「そんなにキツいんですか」

 思い出映像とは文化祭の最終日の最後に流す映像のことだ。各学年や各部活動、個人による出し物、つまり文化祭の様子を撮影して編集したものである。所々に準備風景も流れ、文化祭最後恒例のお楽しみとなっているらしい。


「当然だろう。準備風景はすでに編集しているから何もしなくていいが、文化祭当日の映像はすぐに入手することは出来ない。時間が決まっているものもあるからな」

「マジデスカ」

「去年私が担当した時は、二日の半分を放送室で過ごしたな。もう半分は撮影だった。文化祭をまともに楽しむ時間はないと思っていたほうが気が楽だからな」

 放送部ってそんなにハードなんですか。

 突如拍手が巻き起こった。ステージに意識をやると楽器演奏が止まっている。

 すぐに駆けていく部長の後を追い、ステージに登る。

 この二日間の地獄を考え、そのまま走って逃げさりたくなった。

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