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かしかり  作者: 湯城木肌
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少年-9.恋愛映画


 月曜日の放課後はバイトがある。客のいない店で店番は楽だけれど暇だ。

「だーくそ。何も思いつかねえ」

 レジの前に座り、頭を掻き毟る。

「恋愛モノ恋愛モノ恋愛モノ恋愛モノレンアイモノレンアイモノ……。あ、レンアイモノって何だ?」

 一呼吸置いて、恋愛とモノ、と整理する。こんなところで頭を悩ませていては話が進む気がしない。しかし基本恋愛モノに興味が無い男子に任せるのか、もっといい人選があったんじゃないか部長、と思う。

「ああ駄目。愚痴を吐いてもアイデアは出ないしな」

 そしてふりだしに戻る、と脳内にさいころの絵が浮かぶ。このままじゃずっとこの調子で進まないぞ。

 鈴が鳴り、扉が開いたことに気づく。来客だ。

「いらっしゃいませー」


 来たのは常連客の一人、見た目三十歳後半のサラリーマンだ。借りていく映画の種類を見る限りだと自分と好みが同じようなので気に入っている。自分がチェックしていない映画を借りていくと、週末借りて観る事にしている。大抵が当たりだ。

 サラリーマンは二作品持ってきて、カウンターに置く。どちらも古い映画だ。

 会計を終わらせると、彼はすぐに店を出た。ゆっくり扉を閉めるので優しく鈴が鳴る。

「あ、あの人にオススメの恋愛映画聞けば良かった。って駄目か」

 すぐさま首を横に振る。俺と同じ好みの時点であまり期待できない。

「それにしても、あの人またあの映画借りていったな」

 バイトを始めて一年弱経つが、サラリーマンは定期的に同じ映画を借りていく。俺の知っているうちでは十回程は借りているはずだ。きっと俺がバイト始める前から借りているのだろう。

「そんなにお気に入りなら、買えばいいのに」

 店長にサラリーマンがいつからあの映画を借りているのか聞いたことがあるが、「そんなの気にしたことが無い」との答えが返ってきた。

 気になってあの映画を借りて観たことあるが、俺の好みではなかった。大人になったら面白さが判るのだろうか。

 これはバイトを辞める時までに暴いておきたい謎だ。


「いやそれよりも」頭を両手で押さえる。「まずは目の前の問題だ」

 恋愛モノはどういうものを書けばいいのだろう。

 恋愛を中心に生きている人なんていないだろう。物語も恋愛を中心に展開させるなんて出来ない。

「でも実際に恋愛中心の話は存在してるからなあ」

 愚痴を言っても始まらない。

 今週末に恋愛映画を見て勉強しよう、と面白そうな映画を探すためにカウンターを出た。

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