少女-5.期待の待機
「ただいまー」
帰宅すると母親が夕食の準備をしていることに気づいた。手伝って早めに調理を終わらせて、夕食を食べる。その後すぐに入浴を済ませ、自分の部屋のベッドに飛び乗った。
ベッドの上には携帯電話を置いて、その前で正座をする。携帯電話のデジタル時計は十八時半を示していた。
「ちょっと急ぎすぎたかな」
それでもお風呂や食事中に電話が来たら困るし、と一人で頷いた。
「他の人に言えない話って、何かな」
深く考えないようにしても、やはり考えてしまう。自然と顔がニヤけてしまうのが分かった。
ピリリと着信音が鳴る。妄想に意識が飛びかけたときだったので、不意を突かれた気分だった。慌てて携帯電話を取り、ボタンを押す。少し怖気づいて手を止めたが、すぐに耳元へ持って行く。
「も、もしもし」
『はろー、美奈』
その小さな箱から届いた声に、一瞬思考が止まった。
彼の声、こんなに高かったかな。いや、これは完全に女の子の声。よく聞きなれた、親友の声だ。
耳元から離し、画面に目をやる。そこには確かに今日登録したばかりの、彼の名前が表示してあった。
これは一体どういうことだろう。
疑問を抱きながら、電話を耳元に戻す。
「えっと……、これって」
『あ、驚いた? だよねー』
まさか、と嫌な思考が頭を巡る。まさか全てわたしをからかうために彼女が仕組んだことだったのだろうか。
『今日アイツと交換してあげたでしょ? その時にアタシの家の電話番号をアイツの名前で登録してたの』
「え、え」
『まあサプライズだよ。ドッキリ大成功! 女子はお茶目じゃなくっちゃね』
「そ、そうなんだ、ビックリした」
良かった、とほっと息をつく。
『アイツはそんなに連絡よこす奴じゃないよ。メールなんて大体、了解、とかそんなんばっか。だから交換はしたけど、あんま期待しないようにね』
そう言われて、彼との別れ際に話したことを伝えた。すると彼女は『じゃあアタシは邪魔だね』と笑いながら、多分受話器の向こうでニヤニヤしながら、電話を切られた。
「はあ、ちょっと疲れた」
そのまま力を抜いてベッドに倒れこむ。すると急に眠気が襲ってきて、視界が霞んでいく。
「って、うわわ、これじゃ寝ちゃう!」
飛び起きて、その勢いでベッドから降りる。屈伸をして、眠気を追い返す。
「そうだ、登録内容変更しておこう」
何かをしておかないと眠気がいつ隙を見て襲い掛かってくるかわからないのだ。何かやっておかないと。
「あれ、ケータイはどこに置いたんだっけ」
ベッドに置いたままだ、と意識をベッドの上に向けると、ピリリと着信音が鳴った。
画面に彼の名前が見えた。今度こそ。
すぐに取り上げ、ボタンを押した。
「もしもし!」




