プロローグ
「ねぇ、ルカリオ。」
「なぁに?」
ルカリオと呼ばれた少年は、名を呼んだ少女に近寄った。
「私、外に出てみたいの。」
少女の目は、真っ直ぐとルカリオを見ていた。
そう。
彼女は幼い頃から病弱であり、今もベッドでの生活を余儀なくされている。
よって、今まで外になど行ったことがないのである。
ルカリオは、言葉を失った。
当然、外出は彼女の父である町長から、強く禁じられている。しかし、それを分かった上で彼女は言っているのであろう。
「ねぇ、ルカリオ。私、死んでしまってもかまわないの。もう長くはないって分かってるから。だから、お願い。外に連れていって。」
彼女が、こんなことを言うのは初めてであった。
しかし、ルカリオは言った。
「病気が治ったら行こう。動物園でも、遊園地でもどこでも連れていくから。」
真面目なルカリオは、町長の命に従った。
でも、それだけじゃない。
ルカリオは、本気で彼女の病気は治ると信じていたのだ。
たとえ、誰もが…彼女自身も治らないと言っていたとしても。
彼女が死ぬわけがないと、本気で信じていた。
そんな純粋で、いかにも子供らしい少年であった。
だが、それから1年経った14の夏。
彼女―レベッカはこの世を去った。
ルカリオは自分を責めた。
なんであの時に、外に連れていかなかったのだと。
そして…
何で、彼女に自分の想いを伝えられなかったのだろうと。