第十七話
ゲームの終了。一ヶ月前とは比べ物にならないほど慣れた手つきでバイザーを外した俺の耳に聞こえてきたのは聞きなれた女教師の事務的な声。
『これで本日のMMOカリキュラを終ります。みなさん、お疲れさまでした。次回の授業は来週の火曜日です。次回も全員、授業開始五分前までにはバイザーを着装の上、席についていてください』
その声を聞いて、俺はああ、やはりとため息をつく。週に一回、一日を通して行われるMMOカリキュラは終了した。俺の『ユメワタリ』内での体感時間に狂いはなく、きっかり一週間。七時間での授業の終了だ。
周りではクラスメイト達が何レベルアップしたとか、このモンスターを倒したとか、ついにあの装備を手に入れたとか、自分のギルドがこんなに成長したとか七日間の『ユメワタリ』での武勇伝を楽しそうに話している。
そして、言うまでもなく俺だけはその空気に乗れないでいた。
当然だ。俺が貴重な週一回の『ユメワタリ』での七日間でなしたこと。
それは―――人質に取られて助けをずっとまっていた。さながら、俺が幼少期に遊んだ名作ゲーム『ハイパーアリオブラザーズ』の桃姫のように。
流石に、ないなと、自分でも、思う。
俺は俺の駄目さ加減と言うか、不甲斐なさをよく理解していたつもりだったんだが、この結果には落ち込んでしまう。
『ユメワタリ』で『王国』に捕えられた俺が、あの局面で選択したのは助けを待つこと。
その選択についてあの時の判断がそこまで間違っていたとは思わないけれど、というより今までの経験上、ああいった場面で俺が大人しくするという選択以外、いわゆる主人公のような行動に移れば、それは被害を余計に拡大するだけだという積みたくもない経験則から導きだした判断だったのだけれど、今回はそれが裏目に出た結果だった。
「まあ、所詮はゲーム。この失敗を次に生かせば何の問題もないんだろうけど、王城と夕貴先輩、マナとユウヤミに迷惑をかけたのは本気で反省しなくちゃならないよな」
ゲーム開始直後以外、ゲーム中ずっと俺が捕らわれていた所為で王城真菜と夕貴弥美子。『ユメワタリ』の中でパーティーを組む二人に迷惑をかけたことは疑いようもない事実で、今、俺が一番、気に留めなくてはならないことはそこである。どこか可笑しくもなんだかんだ気の良い二人は突然『王国』の手によって捕えられた俺を心配していないはずがなく、結局、ゲーム中ずっと捕らえられていた俺に対して謝罪を求めることはあいつ等の当然の権利だと俺は思う。
「『人は誰しもが自分のした行動に責任を持つべきだ』か。まあ、あの緑の魔女の言った事は正しいよな。『王国』がどういう意図で俺を監禁したにしろ、結局は何もしないをした俺が一番悪いんだから」
もし俺への監禁が弟がらみのことであったなら、それは確実に俺の優秀な弟がどうにかしただろうからあの時の俺の何もしない選択は正しいものだっただろうけれど、どうやらそれは違ったようなので、全ては俺の怠慢に他ならない。
俺は大仰にため息を吐いて、携帯端末を取り出してメールを送る。宛先は二人。題名は『言い訳は学食でします』。謝罪のついでに食事を貢いで荒ぶるだろう御霊を鎮めようとささやかな抵抗をしながら、俺は重い足取りでゲーム室を後にして学食を出す食堂へと向かっていったのだった。
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朝九時から始まり七時間を費やして行われたMMOカリキュラムが終わり、現在の時刻は午後四時十四分。『ユメワタリ』の中で食事を取っていたとはいえ、それはあくまで食欲中枢を満たす効果しかないわけで、現実の身体が栄養を欲している以上、授業終わりのこの時間の学食がほぼ全ての席を埋め尽くす生徒たちで一杯になっていることは当然のことだった。
そう。男である俺が疲弊してしまうほどに人混み溢れる食堂はほぼ満席だった。唯一、食堂の四隅の内、最も冷たい空気が漂う北側の窓近くのテーブルを除いては。
そして案の定、王城と夕貴先輩はそこに居た。
その二人の姿を確認した俺は食券機で食券を二枚買い、人に揉まれながら学食の受け取りカウンターへと並ぶ。そしてへとへとになりながら手に入れた定食を手に二人の元へと向かっていく俺、本当にいい奴。
「いえ、当然の行為だと私は思うけど。『ユメワタリ』の中で六日と十一時間。食堂で三十分。合わせて六日と十一時間三十分も大佐君は私たちを待たせたんだもの。シカトしたんだもの。・・・無視したんだもの。ねぇ、真菜ちゃん」
「はい。・・・酷いです。大佐君」
「いや、あの、流石に連絡を取ることの出来ない状態だったってことは一部始終を見ていた二人にはわかって欲しいんだけど」
「今もそうやって言い訳をして、本当に私たちの心を甚振るのが好きなのね」
「・・・ひどいです」
「すいません」
素直に頭を下げる俺。『ユメワタリ』という世界とは違い、現実の世界では二人に対して強く出られない俺の姿がそこにはあった。情けないとは言わないで欲しい。
プレイヤーネーム『ユウヤミ』の現実での姿は二年四組出席番号三一番、夕貴弥美子。一年生である俺にとっては学年が一つ上の先輩であるわけだから、ある程度の敬意をもって接さなければならない相手だ。ゲームの中では皆平等という精神を現実に持ち出すことは出来ない。ゲームと現実を一緒にしてはならない。MMOカリキュラムにおいて一番初めに習う基本だ。
そして、プレイヤーネーム『マナマナ』。一年一組出席番号一番、王城真菜。まあ、彼女に関してはなんというか、俺としては夕貴先輩より現実で付き合うとなるとやりにくいと思っている。それは悪い意味でではなく、目の前の王城を見てもらえば分かると思うのだが。
俺は夕貴先輩にもう一度頭を下げてから王城へと視線を移す。
「あ・・・」
すると王城は俺と目が合うなり一気に耳まで赤くして
「うぅ・・・」
不安げな瞳は眼鏡の下で涙を溜めて、両腕で抱いていた本を更に強く抱きしめたその行動で華奢な王城の身体を更に小さなものになり、艶やかな黒髪で編まれた三つ編みは小刻みに震えた。
うん。無理だ。
いくら俺が優秀故に敵を作りやすい弟を持ったせいで老若男女を殴れる男だったとしても小動物は殴れない。
『ユメワタリ』の中では傍若無人を絵に描いたような奴なのに現実に還ると人畜無害もいいところ。いっそ卑怯ですらあるだろう。
このギャップの差はもはやいわゆる萌えの対象ですらないだろう。ツンデレなんかじゃ断じてない。人語で表すことの出来ないこの変化に無理やり当て字をするのなら、きっとそれはツンデレからさらに棘をとったツンテレと言うのが相応しい。
ツンツンしていてテレテレしている。
ああ、うん。自分で言っておいてなんだが、意味が不明だった。
故に俺はそこで思考を切り、買ってきた学食を二人の前に並べてから本題へと移っていく。
俺が捕らわれた。その理由について。二人に尋ねることにした。
「えっと、謝罪をしたところで俺としては原因の究明をしたいんだが、正直、俺には何が何だかわからなかった。いったい、あれはなんだったんだ?」
「当事者である大佐君にわからないことが私達に分かるわけないわ。私達が知っていることは大佐君が『王国』に捕まり、私たちもそれに巻き込まれたけれど、すぐに解放されたという事実だけよ。大佐君、捕まった後、なにをされていたの?」
「なにをされていたかと言われると、放置されていたとしか言えないですね。六日間、まあほぼ七日間、俺は牢屋に入れられていただけでした。食事も出ましたし、不遇な扱いも受けずに、ただ放置されていただけ」
俺の言葉に夕貴先輩は首を傾げる。当然の反応だ。本当に、これを言うのが何度目になるかわからないけれど、意味が解らない。はたして『王国』は俺を捕えてなにをしたかったのか、アプローチがなさ過ぎてわからない。
「捕えられている間、俺はてっきり弟に対する何らかの足枷として『王国』は俺を捕えたと思っていたけれど、それも違うんでしょう?」
『ユメワタリ』終了時のクラスメイトの反応。そして今、こうして話している二人の表情を見れば俺が捕えられたこと以外に特別変なこともなくゲームが終了したことはわかる。
別に『王国』と生徒会ギルド『虹色の絆』がぶつかった訳でもなく、ならば『虹色の絆』に所属する弟に対する人質として俺が捕えられる理由もない。争ってもいない相手に人質も何もないだろう。
「なら、あと考えられる可能性としては俺が『格闘家』だからでしょうか?まあ、地雷職を選んでいる俺は言うなら珍獣みたいなものだから、それを捕まえて観賞したかったとか?」
「そんなわけないわ。相手は仮にも『ユメワタリ』における最大ギルド、三極の一極たる『王国』よ。そんな悪趣味なことするわけないでしょうし、意味もないことをする奴らでもないわ」
「俺が捕えられたのには確固たる理由があると?」
「当然。私でも真菜ちゃんでもなく大佐君を捕えたの。大佐君じゃなければならなかった理由があるはずだわ。弟さんのこと以外で何か心当たりはないの?」
心当たりと言われても、ねえ。弟のことを差し引けば正直に言って俺は凡人。その上、『ユメワタリ』においての俺は地雷職格闘家を選んでしまったプレイヤー。自分で言うのも悲しくなるけれど俺なんかを捕えたところでメリットなんかなんにもないだろ。
メリットがないとすると、もう一つの方向性としては怨恨。
俺が『王国』から恨みを買っていてその制裁として俺は捕えられたという推測。
しかし、それもないと思う。俺は『王国』と恨みを買うほど接した覚えはない。なにしろあれだけ伏線を張っているラスボス(仮)だ。俺は何時だって『王国』を避けて『ユメワタリ』をプレイしてきた筈だから。
けど、まあ、その、実は『王国』から恨みを買う何かをしたような覚えもあるような気もするけれど、今回に関してはそれが原因ではないと何故か言いきってもいい気がした。
どうせなにがあったかもうまく思い出せないようなことだ。そんな些細なことをラスボス(仮)が根に持つことはないだろう。
それにしても、この『王国』に対して何かした様なしてない様な感覚は何なのだろうか。本当に、俺は何をした?ここ一ヶ月以内の出来事であった筈なのに何故だか二年も前のことのように記憶に靄がかかっている感じで思い出せない。あれあれ?
ともかくとして、結論、なにもわからない。
そう俺と夕貴先輩が諦めかけた時、声を上げたのは俺と夕貴先輩の会話をただ黙って聞いていた小動物のように大人しい王城。ではなく、背後から俺の肩を叩き現れた。岩のような体格で巌のような顔をした一人の男子生徒だった。
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名は体を表すという諺がある。その意味は説明するまでもなく世の中に浸透しているものだと思うから、俺はただ今起きている事態を簡潔に説明するだけにしようと思う。
食堂での俺と夕貴先輩、王城の会話に割り込んできた男子生徒の名は郷田三蔵。如何にもな風貌に如何にもな名前。そしてそんな希望を裏切ることなく、彼は王黒学園高等部において特殊な立ち位置に立つ生徒だった。その立場というものがまさしく俺と真逆の物であると言えば、きっと理解してくれると思う。
そんな人物に肩を叩かれた俺。誰もが俺たち二人から距離を取った。言うまでもなく夕貴先輩と王城の姿も既にない。元いじめられっ子と文学少女。それがあの二人の現実でのパーソナリティーなのだから、郷田三蔵という存在の有無を確認した時点で逃げ出すのは当然と言えば当然のことだった。まあ、一言言いたくもあるが何も言うまい。いくら俺の前では普通を装えようと、二人は紛れもない傷ついた少女なのだから。人工物だろうと古傷だろうと、その傷は確かに存在しているのだから。
そして、郷田三蔵と言う男はその傷にすりこまれる塩に他ならない。
だから現状、俺は今、郷田三蔵と向かい合う形で座りうどんを啜っていた。
「俺が傷にすりこまれる塩とは随分な言い方だな」
「そういう認識をあんたが受けているって言うのは事実だろう。実際、俺も少なからず驚いているよ。俺とあんたは現実の世界で絶対に交わることのないキャラクターだと思っていたんだけどねぇ、ゴンゾウさん」
「・・・その名前を現実では口にするな。今の俺は錬金術師『ゴンゾウ』ではない。俺の顔をお前は知らなかったようだが、名前くらいは知っているだろ。俺には取り繕わなければならない世間体がある」
「世間体ねぇ。そういう事を考えられるなら、俺の世間体のことも考えてほしかったけどね。入学間もない一年なのに王黒学園に名を轟かせる不良に話しかけられる俺の立場は、どうなるのか。わからないわけじゃないでしょ」
事実、一定の距離を保ち奇異の視線を向けてくる生徒たちを割箸で指しながら俺は言う。
優秀な弟を持っただけの普通の男子学生という俺の現実でのキャラクターが彼らの中ではブレていることだろうと思う。そのブレが本当のことであったなら、まだ、良かったのだけれど、爪を隠していた鷹のように格好の良いものであったのだろうけれど、事実、そんなことは無いのだから、後から来る理由のない落胆の視線を考えてしまうだけで震えてしまうほどに怖い。本当に勘弁して欲しい。
「・・・その辺のことはすまないと思っている。だからこうして、うどんを奢ってやっているだろう」
きつねうどんと俺の平穏はこの人の中では等価なのだろうか。
なるほど、その傲慢。確かに不良。
「まあ、はい。アリガトウゴザイマス。それで、俺に何の用だよ。郷田」
「随分と棒読みだな。それに俺を呼び捨てか・・・お前はこちらでもあまり変わらないな」
「そりゃ、ねぇ。あれだけ『ユメワタリ』の中で関わってんだ。それに同い年だろ。同学年の男子に君付けさん付けなんて気持ち悪いだろうが。ゲームの中じゃないんだから」
ポツリと呟いた言葉に反応した俺を、郷田は驚きの形相でみた。ただでさえ凶悪な顔がさらに怖くなっている。
いや、そんなに驚くことあろうか。独り言だろうとなんだろうと面と向かって言われれば聞き取ることは難しいことじゃない。俺は難聴でもなんでもない。いたって普通の聴力の持ち主なのだから。
「そうか、まあ、そうだな」
「ああ、そうだよ。ここは現実、ゲームじゃないんだ。そんなキャラ付は要らないだろう、と。話がズレてるな。それで郷田は、俺に何の用があるんだ?」
「それは・・・なんと言えばいいか、俺自身、言葉に詰まるところがあるんだが、端的にいうと、俺は・・・」
郷田は箸を置き、俺を見た。そして言う。ある種の覚悟を滲ませて。
きっと誰に指摘されるまでもなく彼自身が一番よく理解をしている。郷田三蔵というキャラクターにもゴンゾウというキャラクターにも似合わない一言を言う。
「お前の力になれるかもしれない」
「は?」
「お前は『ユメワタリ』の中で『王国』で追われていただろう。お前が逃げる姿は俺の店がある市場からでも見えていた」
俺には意味が解らなかった。
いや、郷田の言葉もその意味も解ったけれど、どうしてそんなことを言うのかが分からなかった。
どうして郷田は俺を助けようとしているのだろうか?
確かに俺は『ユメワタリ』の中での一か月間の間に郷田、ゴンゾウさんとフレンド登録をするくらいには親しい間柄になっていた。だからこそ、不良として悪名を轟かせる彼に悪意がないと知っているからこそ、夕貴先輩や王城とは違い、郷田と顔を突き合わせ食事をできている。
しかし、そこまでだ。所詮は一緒に食事をする程度の間柄でしかない。俺からすればゴンゾウさん、郷田はよく行く店の主人。あっちからすれば顔なじみの客位の存在でした無い筈だ。
そんな人が俺を救うという。
何のために?
どんな理由があって、『ユメワタリ』オウコク学園を牛耳る一大勢力、『王国』から俺を守るというのだろうか。
「・・・お前の警戒は尤もだが、もう少し人を信用してもいいんじゃないか?」
俺の表情をみて俺の考えを悟ったのだろう郷田は眉をひそめながらそういう。
いやいや、こちとら伊達に主人公属性をもつ弟の兄をやっていてはいない。
悪意に善意。悪意のような善意も善意のような悪意も粗方経験してきた。
こういう場合に俺に対して差し出される手は大概の場合、悪魔の取引に他ならないと経験上知っている。
俺はもう弟への不満の捌け口にされるのも弟への告白を手伝うのもごめんだ。
だから、無論、返す言葉は決まっていた。
そんな俺を止めたのはほんの少し前、反省したことだった。
何もしない。そんな選択をしたおかげで俺のゲームの足は止まり、夕貴先輩や王城に迷惑をかけた。そんな事実が俺の足を止めた。
「どうして俺を助けようとする?」
俺の質問に郷田は小さく笑った。もし、ここで帰ってきた言葉が知り合いが困っているのを見過ごせないとかそういう類の言葉であったなら、俺は郷田とこれ以上関わることはしなかっただろう。
なにしろそういう言葉を現実の世界で恥ずかしげもなくいえる類の人間は間違いなく弟と同じ属性を持つ人間だ。一般人(俺なんか)とは相いれない。
しかし、笑顔で返ってきたのは
「・・・気に喰わないだけだ。『王国』が」
その言葉を聞いて俺はなるほどと納得をした。ああ、そうだろう。弟と同じ属性を持つ人間が俺の周りにそうコロコロと転がっていて堪るものか。
郷田三蔵は義に溢れた英雄なんかじゃない。ただ単に―――
「だから、壊したら面白そうだろう?」
現状、『王国』の脅威をあまり知らない俺以上に『王国』の力を知らない。勇気ではなく無知を持って『王国』と戦おうとしている。ただの馬鹿だった。
流石は不良。天に唾する行いにまったくもって迷いがない。それが出した唾が自分に返ってくるかもしれないことを考えもしないからできる蛮勇だったとしても、俺は素直にすごいと思った。
少なくとも臆病な俺にはできない選択だった。
「ははっ、なるほどいいな。理由が全く胸には響かないけれど、これも一つの助け合い。『ユメワタリ』で最も大切なモノの形の一つだ。ああ、ありがとう。郷田」
そういって俺は手を差し出す。『ユメワタリ』でゴンゾウさんにそうしたように。
そして郷田は、あの時と同じように俺の手を力強く握り言った。
「・・・気にするな」
気に食わないから。気に入らないから。理由のない悪意に身を焦がす彼は紛れもなく俗物で、だからこそ信用ができる。
軽い気持ちで『王国』と対峙してはいけないとその存在を俺に一番初めに教えてくれた気のいい友人、早乙女女々(めめ)は言っていた。そしてそれは『王国』を知るものならば誰もが言うことなのだろうと思う。
けれど、それは違うと俺は思う。
『王国』と対峙するなら軽薄な軽い気持ちでなければならないと俺は思う。というよりそうでなければ対峙できない。
そして何より、所詮はゲーム。軽い気持ちで楽しまないでどうするよ。