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堕ちる  作者: seru
7/9

◇ 7

 彼女のいない部屋は真っ白だ。無機質の極みをいくような無機質さ。その中で、彼女だけが真っ黒だったのだ、どこか違う世界から堕ちてきた異質な理のように。汚い表現を使うならば、清潔な空間を這い回るゴキブリのよう――ああ、だからこそ、きっと彼女は私に声を掛けたのだ。今更気付いたなんて、愚かなのだ、きっと。彼女は何度もそう、警鐘を鳴らしていたのに。


 彼女がいなくなってからの私は、間違いなくお人形ではない。お人形に近い存在になっていたのに、今はまるで人間だ、お人形の片鱗もない。一人で外を出歩いて、ご飯を食べて、家へ帰る。私のお金はそろそろ無くなるだろう。元々そんなに持っていたわけではない、彼女は別だったようだが。

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