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間章


子供の多くは誰でも一度は信じていたものがあった。その一つにサンタクロースという存在がいる。

真っ赤な服に白いラインが入った帽子と服。太った体に顎や口元に蓄えた長くふさふさな髭。

クリスマスの日と共に訪れて、子供達にプレゼントを残して去って行く。

子供達はプレゼントに喜び毎年サンタクロースが訪れるのを楽しみに待っている……。



……そう、待っていた。


歳を重ね、人と出逢い、知識を蓄え、やがて気づく。夢幻は消え去り、現実は突然やってくる。タイミングは人それぞれ。


サンタクロースなんてどこにもいないよ?


少し捻くれていた小学生時代。ある日友人に聞かされた現実が信じられなくて、眠気眼を擦りながら必死に睡魔と闘いながら初めて夜遅くまで起きていたイブの夜。


知りたくなかったサンタの姿を俺は見た。

寝間着姿で両手に二つのプレゼントを持った父親の影。寝たフリをしている俺と穏やかに眠ってる千春の枕元にプレゼントを置き、くしゃりと易しく頭を撫でて部屋を出ていった。


サンタなんていなかったんだ……。


そう理解すると何だか今までの自分が子供らしく、馬鹿らしく思えた。布団を被り、瞼を瞑り、目の前の全てを真っ暗にする。


気がついたら夜が明けていた。口を開けっ放しで寝ていたのか、枕元にヨダレが滴れている。隣では起きたばかりの千春が枕元に置かれてるプレゼントを見て歓喜の声をあげている。


「見てみて、お兄ちゃん! サンタさんが私にプレゼント持ってきてくれたよ!!」


そう言って綺麗に包装された箱から女の子向けのキャラクター人形を取り出した。たしかこれは千春が前から欲しいと言っていたものだった。何度も母さんに千春が頼んでも絶対に買ってくれなかった人形。


「やっぱりサンタさんは私の欲しいものをくれるんだ!」


人形を胸に押しあてて笑顔を浮かべる千春。去年までなら自分も同じように包装紙を取り、中から出てきたものに驚き喜んだだろう。


だけど、違う。もう去年とは違うんだ。


真実を知ってしまったショック。そして、その事を知らないで喜んでいる千春を見て、ひねていた俺は千春に言った。


「サンタなんていないよ」


この後二人で口論になり、途中で泣いてしまった千春を慰めに、そして泣かせてしまった俺を叱りに母さんが部屋に来た。


喧嘩の理由を聞かれて黙っていたが、じっと見つめる母さんのプレッシャーに負けて理由を話した。


理由を聞いた母さんは少し寂しそうな表情を浮かべながら、俺にあることを言った。


「 」


……そういえば、あの時母さんは俺になんて言ったんだっけ?

 「祈りを貴方に、手紙を君に」の二章と三章の間章です。

 この話では、次の章である「イヴの夜風はやさしく包み」に繋がる回想を描いています。

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