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ななじゅう ぷらす いち。

 



壊れた板の中から皆さんが硬貨を取り出していきます。


ユージンさんが銀貨が三枚、セシルくんは金貨二枚、レイナーさんは金貨一枚、アイヴィーさんは銅貨三枚。


ドキドキしながら私も壊れた板の中から硬貨を掴み出しました。


――――…黒い硬貨が一枚、ですか?


ヴェルノさんを見上げてみればニヤリとした笑みを浮べて私の頭を撫でてきます。




「上出来だ。」


「…黒ってなんでしたっけ?」


「全員の硬貨をお前が総取りって意味だ。」


「ぉお!それは凄いのです!」




皆さんが苦笑して硬貨を渡してくださいました。


私の持ち金は全部で金貨三枚、銀貨三枚、銅貨が十一枚。


他の皆さんは今回の分がないので、それはつまり…




「真白ちゃんの勝ちね。残念、負けちゃったわぁ。」




言葉とは裏腹に楽しそうなアイヴィーさんに、私も嬉しくなってしまいました。


勝った!勝ちました!!


だけど皆さんがかけていたお金は貰わないことにするのです。ほとんどヴェルノさんに買っていただいているので、私が持つお金など必要ないのですから。


お願い券も結局私の下へ戻ってきてしまいました。


次に遊ぶ時までとっておこうと思っておりましたらヴェルノさんが横から洋紙を持って行ってしまうのです。




「板を壊した手間賃くらい貰ったって良いだろ?」




ニヤニヤとからかうような笑みを浮べるヴェルノさんにハッと気付きました。


手伝ってくださったのはそういうことなのですか!




「それはズルいのです!ダメなのです!」


「また‘駄目’か。ったく、人間に戻ってから‘駄目’が多くなったなぁ真白?」


「そ、それはヴェルノさんが悪いのですっ!」




この一週間、ヴェルノさんに何度駄目と言ったかは数え切れません。


だってどこでも抱き締められるのです。お部屋ではキスされそうになったり、お風呂に連れて行かれそうになったり…。


ヴェルノさんも男の人ですから、そういう気持ちがあって当たり前なのでしょう。でも私はまだ勇気が出ないと言いますか。


……ともかく、今の私は駄目!の一点張り状態なのです。


呆れたように溜め息を零しながらも「これは貰っとくぞ」とヴェルノさんはお願い券をポケットに入れてしまいました。


他の船員の方々ならまだしもヴェルノさんの手に渡ったとなると後が恐ろしいです。




「あらぁ、ヴェルノったら真白ちゃんに何を‘お願い’するのかしらねぇ?」




アイヴィーさんが楽しそうに言いましたが、私はちっとも楽しくないのですよ!






































































その夜、ベッドの上でごろごろしておりましたら横にいたヴェルノさんが思い出したようにポケットからお願い券を取り出しました。


思わず固まった私に笑いながらもその洋紙を本の間に挟みます。


…あれ、使わないのでしょうか?


不思議に思っていましたら抱き締められてしまいました。




「使わないのですか?」


「すぐ使ったら勿体ねェだろ。」




どうやら使われるのはまだ先のようなのです。それにホッとしながらヴェルノさんにギュッと抱き付き返します。


私より大きくてがっしりとした体付きなので時々押し潰されないか不安にもなりますが、抱き締めてもらうととっても落ち着くのです。


あったかくて、仄かに潮の匂いがして、でも夕食に飲んでいたお酒の匂いもちょっとだけしました。


こうしていると帰って来れて嬉しいなぁと心から思うのです。


それと同時に元の世界のことも思い出してしまって鼻がツンとしてしまいます。ぐずぐずと私が泣き出してもヴェルノさんは何も言わずにそっと優しく背中を撫でてくれるので、余計に涙が止まらなくなってしまうのですよ。


ふっと不意に泉の底で会ったお姉さんのことを思い出しました。


まだ、私のしなくてはならないことが残っているのです!


ガバリと顔を上げたせいでしょうか。ヴェルノさんが驚いた顔で私を見下ろしてきました。




「ヴェルノさん、私は行かなくてはならないところがあるのです!」




唐突にそう言ったのでヴェルノさんが眉を顰めます。




「行くって、どこにだ?」




それは勿論お姉さんの旦那さんのところなのですよ!


そう、その人はヴェルノさんが教えてくださった神話の神様で…、




「…………ど、どこにいらっしゃるのか聞いてなかったのです!」




神様に会うためにはどこへ行けばよろしいのでしょうか?


あわあわしていた私の頭がヴェルノさんの手によって軽く小突かれます。


顔を戻すと呆れと不機嫌が混ざった表情で見つめられてしまいました。




「訳分かんねェよ。とりあえず全部話せ。」


「それもそうなのですね。実は―――…」




私はヴェルノさんに前に見た夢のお話と、泉の中での出来事をお話しました。


…別の世界から来たということだけは伏せてですが。


嫌われたらイヤなのです。ヴェルノさんに嫌われてしまうのが怖いのです。


きっとヴェルノさんなら笑って面白いなと言ってくださるのでしょうけれど、私は自信がないのです。


泉の底で会ったお姉さんが神話に出ていた眠り姫であることと、そのお姉さんから神様に伝言をお願いされたことを話すと難しい顔をされました。




「…やっぱり神様と会うことなんて出来ないのでしょうか…?」




あのお姉さんにお願いされた伝言は必ずお伝えしたいのです。


お世話にもなりましたし、あのお姉さんは私で、私はあのお姉さんなのですから。


ヴェルノさんは考えるように虚空を見つめていたかと思うと、私にチラリと視線を向けます。




「会えるには会えるな。」


「ほんとですか!」




飛び起きた私を黄金色の瞳がジッと見ます。とても真剣な顔にドキッとしてしまいました。


今までにも何度か真剣な顔を見たことがありますが、なんだか今のヴェルノさんは何か悩んでいるようでもあるのです。


五分…いえ、十分だったかもしれません。


ヴェルノさんの瞳がふっと和らいで溜め息のような言葉が聞こえてきました。




「仕方ねェな。」




どこか諦めたような、でも酷くスッキリとした表情でヴェルノさんは一言「連れてってやるよ」と言ってくださいました。


これは私の問題で、私の我が侭なのに。嬉しくて嬉しくて私はベッドに寝転がっていたヴェルノさんへ抱き付いてしまいました。





 

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