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ごじゅう。

 




「それねぇ、あんまり練り過ぎると甘くて食べられなくなっちゃうのよ。」


「練ったら練った分だけ美味しくなるのではないのですか?」


「真白ちゃんには残念だけど甘くなるだけ。」




ユージンさんが困った様子でいた訳がなんとなく分かりました。


私がぼんやりしながら練り続けているのを止めようとして、だけど声をかけることも出来ないし、肩を叩いて驚かせたらと止め方に困っていたようなのです。


確かにいきなり肩を叩かれたらビックリして落としてしまうかもしれません。


真っ青になった水あめは綺麗な色なのに、かなり甘い匂いが漂ってきます。


戻って来たヴェルノさんもこれには呆れよりも驚いた顔をしました。




「練り過ぎだろ。どんだけ練ってたんだ?」


「えっと、五分…あ、十分くらい練ってました。」




食べますか?と聞いたら苦い顔で「んな甘いモン食えるか。」と顔を背けられてしまいました。


そ、そんなに甘くなってしまっているのでしょうか?ちょっと怖いのです。


でも練ってしまったのは私なので、きちんと食べなくては。


意を決して棒の片方を口に入れてみます。


―――――――…

―――――…

―――…




「あ、甘っ…、」




それこそお砂糖をそのまま口の中に入れたような甘さなのです。


甘いものは美味しいと思っていた私の考えは間違いなのですよ。甘過ぎると美味しさを通り越して、こうえぐみというか苦味があるようにも感じられるのです。


申し訳程度にですが何か別の香りもするのですが、残念なことに甘い香りのせいでほとんど分かりません。


…うぅ、これは暴力的なくらい甘いのですよ…。


ヴェルノさんはこの甘い香りが嫌いなようで、食べ終えるまでは近付くなと言い残してまた船の方へ戻って行かれました。つまりこの水あめが食べ切れるまで動けないということなのです。


結局甘い匂いにユージンさんとアイヴィーさんも離れてしまいました。


どこかへ行ったという訳ではなく、ちょっと離れた場所で壁に寄りかかって私の様子を見ていると言った感じなのですが……そこまでこの甘い香りはきついのでしょう。


腹いせに棒を噛んでみたらハッカによく似た香りと味がしました。これは飴を食べながら噛んだら甘みと匂いが弱くなるのではと試したら先程より少しだけ甘い味が柔らかくなります。


飴を食べながら一生懸命棒を齧っていると思っていたよりも早く飴は口の中から消えました。


けれど甘い匂いがまだ残っているので棒を噛み続けていたら、唐突に口から棒を引き抜かれてしまいます。見るとアイヴィーさんが立っていました。




「こーら、これは食べる物じゃないわ。駄目じゃないのぉ。」




そう言って棒を見た後に笑い出しました。棒には思い切り噛んでいたからかクッキリ歯型が残っています。




「でもスッとするのですよ。」


「そうだとしても、これは飴の香り付けのためだけなんだから噛んじゃダメ。」




ポイと投げ捨てられた棒は傍にあったクズかごの中へ綺麗に落ちていきました。


もう少しだけ噛んでいたかったのですが、仕方ありません。


口の中の甘さももう落ち着いていたので棒は素直に諦めてヴェルノさんを待つことにするのです。


いつもは海水に沈んでいるので全体像を見ると、本当にとても大きく、沢山の船員の方々が乗れるのも頷ける船はよくよく見てみると所々が壊れたり傷んでいたりと修理が必要そうな場所は数え切れないほどにありました。


それら全てを見て回っているようでヴェルノさんは船大工さんと一緒にあっちに行ったりこっちに来たりと大忙しなご様子。私が行ってはそれこそお邪魔になってしまいそうなのです。


甘い香りがある程度薄れたからかアイヴィーさんとユージンさんが左右に座ってくださったので、三人で船を眺めて待つことになりました。


二人は何とも感慨深げに船を見上げています。ずっと乗っている船ですから思うことも多々あるのでしょう。


船底の具合を見ていたヴェルノさんが大きな剣を片手にこちらへ来ます。




「船底の水漏れの原因だ。」




そう言ってかなり古ぼけたその剣を見せてくださいました。


刃もこぼれていて、柄に巻かれていた布もボロボロ。少し貝殻も付いています。




「なぁに、コレ。もしかして刺さってたって言うの~?」


「そのまさかだ。道理で船底に水が染み込む訳だ。」


「一体何時から刺さってたのかしらねぇ。」


「さぁな。」




持った剣は見た目よりもずっと重いのです。私よりも長い剣。皆さんはいつも、こんな長くて重たいものを軽々と振り回しているのですね。すごいのですよ。


ブンブンと上下に振っていたら勢い余って後ろの壁に刃先が刺さってしまいました。


しかも振った勢いは消えなかったので剣を残して私だけ後ろへ転がってしまったのです。


壁と木材の隙間に転がり落ちた私の名前をアイヴィーさんが慌てて呼んでくださいましたが、間に嵌まってしまったようで身動きが取れません。


すぐに誰かが掴んで隙間から引き上げてくださいます。




「お前は‘待て’も出来ねェのか?」




引き上げてくださったのはヴェルノさんでした。


全身を叩かれて汚れを落としてもらいましたが、どうやらそれだけでは落ちない汚れも付いてしまったようなのです。


「ったく…戻ったら風呂だな。」と宣告を受けてしまいました。そうして「少し静かにしてろ。」と怒られてしまったのです。……ごめんなさいです。


ヴェルノさんは刺さった剣を引き抜くとそれを膝へ叩き付けて真っ二つに折り、ユージンさんに手渡しました。ユージンさんは折れた剣を捨てにどこかへ行ってしまいます。


うぅ…遊び過ぎたので反省します。


壁の方を向いて体操座りをして反省していた私を、戻って来たヴェルノさんが押してまた壁の隙間に落ちてしまったのは言うまでもありません。





 

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