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にじゅう。

 






「貴女、随分不思議な体験をしているのね。」




ゆっくりとした口調で、けれど労わるような言葉に思わず頷いてしまいます。


おばあさんは一度私を上から下まで見つめました。そうして、ヌイグルミは随分窮屈ではないかしらと苦笑いを浮べました。


どうして見ただけで私がただのヌイグルミではないのだと分かったのでしょうか?


水晶を撫でながらおばあさんは朗らかに笑います。




「一週間程前に偶然水晶に貴女が映ったのよ?それに私の目は物の本質が見えるから、貴女の本当の姿もそのヌイグルミに透けて見えるわ。」


「あの、なら、人間の姿に戻る方法はあるのでしょうかっ?」




つい力んで前のめりになってしまった私を見ておばあさんは頷いてくださいました。


それだけで私の心には希望が湧きます。




「あるわ。」


「本当ですか?!」


「えぇ、それに心配しなくても貴女の大好きな船長さんと一緒にいれば、自ずと見つかるわ。」


「そうなのですかっ。」




それは何てすごいことでしょう。


ヴェルノさんは本当にすごい方なのかもしれません。


でも、大好きというのは照れるのです。確かにヴェルノさんのことは大好きなのですが、皆さんのことも大好きなのですよ。


おばあさんが早く見つかるよう、おまじないをかけた小さな花のブローチを一つくださいました。


花弁が何十にも重なっていて見た事もないお花でしたが、可愛く素敵なデザインに嬉しくなります。


それを服の胸元につけると身体の中から元気が出てくるような気がしました。


けれど人の姿に戻るのがどんな方法なのかは教えていただけないそうです。


結果はそこに辿り着くまでの過程の苦労が大事なのだそうで、簡単に分かってしまっては意味がないようなのです。


何事にもツラいことや苦しいことはあって、それを知らずに結果を得ても、私のためにはならないのだそうです。


言葉は難しかったですが私のことを考えてくださっていることはよく分かりました。


私も自分のことですのでやはり多少なりとも努力したいと思います。なので、方法があると分かっただけで十分です。


おばあさんとお話をしていましたら布を持ち上げてヴェルノさんが顔を出してきました。




「話は済んだか?戻るぞ。」


「あ、はい。…おばあさん、今日はありがとうございました。私がんばってみます!」




とても素敵なブローチもいただきましたし、今の私はやる気も元気も百パーセントなのですよ。


おばあさんはニッコリ笑って送り出してくださいました。


ウェルダンさんはお仕事が入ってしまったらしくヴェルノさんと共にテントを出るときにはいらっしゃいませんでした。


お礼を言いたかったのですがお仕事では仕方ありませんね。


今度会う機会にきちんとお礼を言いたいと思います。




「買い物行くぞ。」


「買い物ですか?」


「食器を買うんだろうが。言い出したお前が忘れてんじゃねェよ、馬鹿。」




そういえばそうなのでした。


おばあさんと会ってお話を聞いて、ついつい忘れてしまいました。


そこでふとヴェルノさんに報告しなければいけないことに気が付きます。




「ヴェルノさん、ヴェルノさん。」


「あ?」


「私、人の姿に戻れるそうですよ。それもヴェルノさんと一緒にいると見つかると教えていただきました。」


「そうか。なら思ったよりも時間はかかんねェかもな。」


「そうだと、とても良いのです!」




頭の上に乗るヴェルノさんの手に撫でてもらいながら、私はへらりと笑ってしまいました。


きっととても間抜けな笑顔だったでしょう。でも良いのです。


皆さんとまだまだ一緒にいられるのですから嬉しくないはずがありません。


早く人の姿に戻る方法が見つかって、元に戻れたら、皆さんのお手伝いを沢山したいのです。


甲板のデッキがけも、調理場のお手伝いも、見張り台に上ったり自分でドアを開けたり、したいことはいっぱいあるのです。




「あら、真白ちゃん。良いことでもあったのかしら?凄く嬉しそうよぉ?」


「分かりますか?」





外で待っていてくださったアイヴィーさんが頬を突付いてきます。


そんなに私は分かりやすいのでしょうか?




「なんだか嬉しそうな雰囲気がしたわ。」




羨ましいわね!と笑うアイヴィーさんも楽しげで嬉しそうなのです。


ヴェルノさんがいて、アイヴィーさんがいて、幹部の方々がいて、船員の方々がいて。私はやはりヴェルノさんの船にいられて幸せ者なのですね。


皆さんのために出来ることは少ないかもしれませんが私もこれから色々頑張りたいと思います。




「新しい食器を買ってもらえるのですよ。」


「あぁ、普通の食器でも真白ちゃんには大き過ぎるものね。」


「はい。できれば可愛いお皿が欲しいのです。」


「ならアタシの行きつけのお店に行きましょ!とっても可愛い小物とか色々あるのよぉ~!」




アイヴィーさんを先頭に歩き出します。私はまた抱っこしていただいています。


上を見上げればヴェルノさんが丁度見下ろしていました。


空よりも淡く海よりも深い青い髪と黄金色の瞳は何度見ても綺麗な色で、空に映えて素敵なのです。


…食器も青色か黄色系の色で統一しようかと思います。






 

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